研究課題
これまでに我々は、酢酸(acetate)をフッ素標識したPET診断薬[18F]Fluoroacetate ([18F]FACE)に着目し、臨床応用へ向けて新規に開発した合成法であるone-pot蒸留法の合成やラット脳虚血-再灌流モデル及びヒト脳虚血患者における[18F]FACEの取り込みについて検討し、15O-ガスにおけるOEF(脳酸素摂取率)との関係について報告してきた。本研究では、虚血性脳血管障害を判別可能にする画像診断の開発を目指し、様々な酢酸誘導体を世界初の薬剤として合成し、従来の15O-ガスを用いた脳PET検査とは異なる新たな脳虚血イメージング法の開発及び[18F]FACE集積機序の解明を行なう。今回、使い捨てカラムを使用してHPLCの分離精製を省略した方法(蒸留及び逆相カラムで分離捕集して水洗いした後、少量のエタノールを含む水で目的物を溶出)によってMethyl [18F]Fluoroacetate (Methyl [18F]FACE)を合成し、前臨床段階として、モデル動物を用いてその有用性を検討するため、イソフルレン麻酔下にて中大脳動脈の一過性脳虚血/再灌流障害(transient MCAO)モデルラット(虚血時間60分間)を作製して、拡散強調MRI、灌流MRI画像により当該中大脳動脈域の虚血を確認した。薬剤安定性の高いMethyl [18F]FACEを用いて、ラット脳虚血モデルにおける障害側への取り込みについて検討を行った結果、脳虚血後45分では、虚血側中大脳動脈域における障害側へのMethyl [18F]FACEの取り込みは、反対側である正常側に比較して約2倍の著明な増加を示した。これらの結果から、Methyl [18F]FACE-PETは、虚血性脳血管障害の診断に有用である可能性が示唆された。
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