本研究は拡散MRI のtriexponential関数解析および造影MRIより得られる情報を,次世代人工ニューラルネットワークであるディープラーニングを用いて解析し,乳癌の悪性度を層別化することを目的とした.研究内容として①triexponential解析における各拡散係数の,乳癌サブタイプによる差異を明らかにする,②各拡散係数と病理学的悪性度類推指標との関係を明らかにする,③造影MRI所見と病理学的悪性度類推指標との関係を明らかにする,の3つのステップを経て,最終的に病理学的悪性度と最も相関するMRI情報解析用プログラムを導き出し,さらには血液検査データ等も加味した評価が可能な,総合的乳癌悪性度解析ディープラーニングプログラムの開発に結びつけることを計画した.最終年度までの検討により,トリプルネガティブ乳癌とHER2陽性乳癌において,病理学的悪性度指標であるKi67高値群では,低値群よりもmonoexponential解析指標であるADCが有意に低いことがわかった.しかしtriexponential解析の3種類の拡散係数については,すべてKi67高値群と低値群の間に有意差は認めなかった.一方,ルミナル乳癌では,Ki67高値群でADCおよびtriexponential解析の3種類の拡散係数の1つであるDが有意に低く,ダイナミックMRIの指標であるSER(signal enhancement ratio)が有意に高いという結果が得られた.最終年度の検証により,triexponential解析指標がmonoexponential解析指標よりも悪性度類推に必ずしも優れているとは言えないことがわかり,またKi67のカットオフ値引き上げの動きも出たことから,悪性度解析プログラムのプロトタイプの開発という当初の目標までは未達成の状態である.このため今後も研究を継続していく予定である.
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