本研究では、妊娠高血圧症候群患者と診断された妊婦に対して、胎盤MRIを撮像し、得られた各種画像データから妊娠の転帰良好と予想される群、不良と予想される群とに層別化することにより、臨床的に各々の群に適した対応を発症早期からとることが可能となることを目的とした。 対象となる患者群の数が限られており、現在も前向きに症例を蓄積している。その一方、これまでに蓄積した症例を対象として、妊娠転帰により症例を分類し、各々のMRIから得られる要素との関連性について評価を行った。24週から40週の単胎妊娠症例91例を対象とし、このうち、胎児奇形等を除いた68例を低出生体重児群と正常体重児群、緊急帝王切開群とそれ以外の群、正期産群と早期出産群に分類。MRIから得られた、intravoxel incoherent motion(IVIM)から導かれるfactorであるf値・D*値・D値、及びT2値(T2緩和時間)、T2強調像で計算した胎盤厚、ドップラー超音波検査による臍帯動脈の血管抵抗pulsatility index(PI)を用いて、まず、胎児週数と各パラーメーターの相関を確認した。次に上記胎児群間で関連のある画像要素を検討した。この結果、胎児週数と有意な相関が認められたのは、T2値と胎盤厚で、IVIM各要素との関連は認められなかった。低出生体重児群と相関の見られたのは、T2値、IVIMのf、超音波のPIであった。緊急帝王切開と関連のあったのは、T2値、IVIMのfとDfastであった。早期出産群においては、IVIMの全要素とT2値が有意に正期産群より低値を示した。結論として、胎盤のT2値とIVIMから得られるf値が胎児予後を予測する上で重要な要素として用いることができる可能性が示唆された。
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