研究課題
複雑な線量分布を形成可能な高精度放射線治療や、CT、IVR をはじめとする放射線診断装置による医療被ばく管理には、人体内の詳細な線量分布を精度良く評価 することが求められている。人体模型内に線量計を挿入して局所的な線量測定を行う従来法では、測定に多くの時間を有し、また、線量計自身の放射線吸収や散 乱の影響により高空間分解能での評価が困難である。そこで、申請者らはセラミックスが密度や形状を可変でき、かつ放射線計測に用いられる熱蛍光特性を有し ていることに着目して、セラミックスによる人体模型を作製し人体模型のファントム自体が線量計として機能する放射線診断・治療時の人体内3 次元線量分布評 価システムの開発を進めている。放射線治療・診断のQA の高度化や医療被ばくのリスク評価の信頼度向上が期待される研究である。 平成29年度から平成32年度までの計画で、具体的な実施内容は①骨および筋肉組成等価な熱蛍光スラブ材料の開発とその評価②軟組織・脂肪組成等価な熱蛍光ス ラブ材料の開発とその評価③選定した熱蛍光材料の人体模型化と線量読み取り技術の確立④全自動熱蛍光測定装置を改良、である。 2019年度は、①および②の骨・筋肉・軟組織・脂肪組成等価な熱蛍光スラブ材料の開発を行った。まず、アルミナの密度制御率と各組織との等価性を理論的に考察し、深部線量百分率や軸外線量比などにおいても目的の組織との等価性を評価した。実際に制作できた密度制御アルミナ熱蛍光板は、最大密度制御率が65%までであった。そのため、新規材料としてホウ酸リチウムを主原料とした熱蛍光板の開発を進めた。添加物であるアルミナの添加量の依存性を調べることで感度は最適化されたが、フェーディングの影響を受けることも明らかになった。次年度の課題として、ホウ酸リチウム系熱蛍光体の添加物の種類を変化させ熱蛍光特性の最適化を図る。
2: おおむね順調に進展している
2019年度は、骨・筋肉・軟組織・脂肪組成等価な熱蛍光スラブ材料の開発を行った。まず、アルミナの密度制御率と各組織との等価性を理論的に考察し、深部線量百分率や軸外線量比などにおいても目的の組織との等価性を評価した。実際に制作できた密度制御アルミナ熱蛍光板は、最大密度制御率が65%までであった。そのため、新規材料としてホウ酸リチウムを主原料とした熱蛍光板の開発を進めた。添加物であるアルミナの添加量の依存性を調べることで感度は最適化されたが、フェーディングの影響を受けることも明らかになった。次年度の課題として、ホウ酸リチウム系熱蛍光体の添加物の種類を変化させ熱蛍光特性の最適化を図こととなった。最終年度に向けて、理論的な解析はほぼ順調に進み、材料開発においても、改善点はあるが軟組織の等価性を高めるのみとなっている点、装置の改良においても計画通りである点からおおむね順調に進展していると判断した。
アルミナの密度制御率と人体組織等価性の関係は詳細に検討できている。しかし、アルミナの密度制御だけですべての臓器との等価性を高める技術は開発途上であるため、より精度高く人体組織との等価性を高めるには、新たな材料探索が必要となる。そのため、アルミナと同様の理論解析手法で、ホウ酸系、酸化物系、フッ化物系について解析を進める。これについては、感染拡大防止のために自宅勤務となった場合の対応策でもある。
3月に開催される予定の学会が、新型コロナの影響で延期になったため、旅費や参加費が次年度に繰り越されることとなった。
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