研究課題/領域番号 |
17K10412
|
研究機関 | 東京都立大学 |
研究代表者 |
眞正 浄光 東京都立大学, 人間健康科学研究科, 教授 (20449309)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 医療被ばく / 人体模型線量計 |
研究実績の概要 |
複雑な線量分布を形成可能な高精度放射線治療や、CT、IVR をはじめとする放射線診断装置による医療被ばく管理には、人体内の詳細な線量分布を精度良く評価することが求められている。人体模型内に線量計を挿入して局所的な線量測定を行う従来法では、測定に多くの時間を有し、また、線量計自身の放射線吸収や散乱の影響により高空間分解能での評価が困難である。そこで、申請者らはセラミックスが密度や形状を可変でき、かつ放射線計測に用いられる熱蛍光特性を有していることに着目して、セラミックスによる人体模型を作製し人体模型自体が線量計として機能する放射線診断・治療時の人体内3 次元線量分布評価システムの開発を進めている。放射線治療・診断のQA の高度化や医療被ばくのリスク評価の信頼度向上が期待される研究である。 平成29年度から令和2年度までの具体的な実施内容は①骨および筋肉組成等価な熱蛍光スラブ材料の開発とその評価②軟組織・脂肪組成等価な熱蛍光ス ラブ材料の開発とその評価③選定した熱蛍光材料の人体模型化と線量読み取り技術の確立④全自動熱蛍光測定装置を改良、である。 これまでに、①および②の骨・筋肉・軟組織・脂肪組成等価な熱蛍光スラブ材料の開発を行い、アルミナを主材料とした密度制御スラブが最適で、その密度制御率と各人体組織との等価性を理論および実測で評価した。軟組織以外では、密度制御率と組織の関係が明らかになり実用的にも問題ないことが示された。一方で、軟組織に関しては課題が残された。そこで、2020年度は、BeOやLiF、Li2B4O7を主原料とした熱蛍光板の開発を進めた。BeOの光子、荷電粒子、中性子に対する特性調査は順調に進み軟組織材料として有力な候補となることを明らかにした。しかし、コロナの影響で大型照射装置の利用が制限されたため、一部の実験が行えず、次年度に持ち越すことになった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年度は、BeOやLiF、Li2B4O7を主原料とした人体軟組織等価熱蛍光板の開発を進めた。BeOの光子、荷電粒子、中性子に対する特性調査は順調に進み軟組織材料として有力な候補となることを明らかにした。しかし、コロナの影響で大型照射装置の利用が制限されたため、BeO以外の人体軟組織等価熱蛍光材料候補であるLiF、Li2B4O7については、実施できなかったため、”やや遅れている”と判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
アルミナの密度制御だけですべての臓器との等価性を高める技術は開発途上であるため、より精度高く人体組織との等価性を高めるに、BeOやLiF、Li2B4O7を主原料とした人体軟組織等価熱蛍光板の新たな材料探索が必要となる。そのため、アルミナと同様の理論解析手法で、ホウ酸系、酸化物系、フッ化物系について解析を進めると同時に、実測による検証を進め、3 次元線量分布評価システムを完成させる。
|
次年度使用額が生じた理由 |
2020年度は、BeOやLiF、Li2B4O7を主原料とした人体軟組織等価熱蛍光板の開発を進め、BeOの光子、荷電粒子、中性子に対する特性調査は順調に進み軟組織材料として有力な候補となることを明らかにした。しかし、コロナの影響で大型照射装置の利用が制限されたため、BeO以外の人体軟組織等価熱蛍光材料候補であるLiF、Li2B4O7については、実施できなかった。アルミナの密度制御だけですべての臓器との等価性を高める技術は開発途上であるため、より精度高く人体組織との等価性を高めるに、BeOやLiF、Li2B4O7を主原料とした人体軟組織等価熱蛍光板の新たな材料探索が必要となる。そのため、アルミナと同様の理論解析手法で、ホウ酸系、酸化物系、フッ化物系について解析を進めると同時に、実測による検証を進め、3 次元線量分布評価システムを完成させる。
|