本研究は、グローバルな脳活動―脳血流量―脳温度の関係をMRI(Magnetic Resonance Image)のみを用いて計測する手法を開発することを目的とし、脳の状態観測指標を新たに提供することにより、加齢等に伴う脳機能・活動の変化を簡便に捉えることを目標とする。本年は、脳深部温度計測に影響を与える計測手法の調査を目的に、拡散強調画像とMRスペクトロスコピーにより得られた脳温の関係からCSF流速の影響を健常者100名(20-60代各男女50名)で計測した結果のまとめを行った。脳温をCSFの最大流速時と最小流速時およびランダムに撮像したDWIから計算し、比較することによりCSFの流れの影響を検証し、学術雑誌に採択されている。結果として、CSF流速の影響は限定的であり、流速の大小、ランダムさによらずDWIから計算した脳温度を利用できることが分かった(CSF流速の影響を考慮した脳温計測との間に有意差は認められなかった)。 MRIを用いた脳内深部温度計測の基礎となる拡散強調画像法(DWI)を用いた研究について、論文・解説記事等を発表し、MRI領域におけるRadiomics研究との関連についてもレビューを行った。さらに、DWIの安定測定、高速測定法、最新研究などについて国内外の学会で報告を行い、これまでに脳深部温度計測について学会等において講演を行った。DWIを用いたグローバルな脳温度の計測手法について一定の手法を確認できた。加えて、脳血流MRIから脳活動(酸素消費量CMRO2)を推測する手法(計測手法と解析手法)を確立した。
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