研究課題/領域番号 |
17K10422
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研究機関 | 秋田県立脳血管研究センター(研究部門) |
研究代表者 |
中村 和浩 秋田県立脳血管研究センター(研究部門), 放射線医学研究部, 主任研究員 (10312638)
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研究分担者 |
石川 逹哉 秋田県立脳血管研究センター(研究部門), 脳神経外科学研究部, センター長 (10281809)
木下 俊文 秋田県立脳血管研究センター(研究部門), その他部局等, 研究員 (70314599)
佐々木 一益 東北大学, 加齢医学研究所, 助教 (80738948)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | MRI / 拡散強調画像 / 血管径計測法 / 磁化率強調画像 |
研究実績の概要 |
本年度は、臨床用MRI装置を用いて、単一収束型スピンエコー法による拡散強調画像(SRSE-DWI)に加え、磁化率効果の影響が少ない2回の180度パルスを加える2回収束型スピンエコー法のDWI(TRSE-DWI)を取得することを検討した。この異なる2つのDWI撮像法の差分画像は磁化率効果の違いを反映した画像となり、磁性体造影剤を用いない血管径計測法の開発が可能であると考えている。本年度は2つのDWIの差分画像について、その有用性を検討した。 測定対象は穿通枝領域の脳梗塞患者4名とした。3T MRI装置で、EPI法に基づくSRSE-DWI, TRSE-DWIを撮像し、いずれもTR/TE = 6000/72 ms, 5mmスライス厚とした。TRSE-DWI、SRSE-DWIのb値0と1000の画像から、ADC画像としてそれぞれTRSE-ADC, SRSE-ADCを算出し、TRSE-ADCとSRSE-ADCとの差分画像(ADC-Diff)を評価した。 得られたすべての画像において、TRSE-DWIの画素値はSRSE-DWIの画素値より低かった。TR、TEは同じ値としたが、Motion Probing Gradientの印加回数の違いにより画素値が低くなったものと考えらえる。SRSE-ADCはTRSE-ADCより値が小さく、ADCの差分画像では被殻など磁化率効果の大きいところでその差が大きかった。このことは、差分画像が磁化率効果を反映しているものと考えられた。差分画像を利用していることから、横緩和時間成分の違いは相殺されており、TRSE-ADCとSRSE-ADCの差分画像は、組織磁化率を反映した画像として臨床的に有用であると考えられた。今後は組織磁化率の変化から血管径計測が可能かどうかを検討していきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成29年度の第1の目的は、磁性体造影剤を用いた血管径画像法により推定された血管径が2光子顕微鏡で実測された血管径とどの程度一致するかを示すことにあった。そのため、健常ラット、脳虚血モデルラットで、MRIによる血管径計測方法の妥当性について2光子顕微鏡を用いた実測により確認することにしていた。しかしながら、費用負担などを整理することに時間がかかり、2光子顕微鏡での実験を立ち上げ、測定を開始できる状態になっていない。分担研究者の変更等も含め、体制を整えたうえで、平成30年度中に2光子顕微鏡の測定を実施していきたい。 一方、平成30年度以降に開始を予定していたSRSE-DWI,TRSE-DWIの臨床用MRIを用いた測定を実施し、結果を得ることができた。本研究課題ではこの2つの画像から血管径計測法が提案できるものと考えていたが、測定の結果、撮像時間の短い新たな磁化率強調画像法としても、有効な撮像法であることが示され、この点に関しては予定以上の進捗で進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、2光子顕微鏡での測定が可能とする環境整備を進め、血管径計測をおこなうことを第1の目的とする。2 光子顕微鏡は東北大学医学系研究科付属動物実験施設の小動物イメージングラボに配置された共通機器であるFV1000MPE(Olympus 社)を利用し、動物用MRI は秋田県立脳血管研究センターに配置された、4.7T 動物用MRI 装置(Agilent社 Inova)を利用する。実験は、健常ラットを10匹程度用いて、2光子顕微鏡の観察の後、動物を東北大学から秋田県立脳血管研究センターに移動し、中村がMRIの計測をおこなう。石川は脳外科医の優れた見識を生かし、生理モデルに関する助言を行うと共に、実験方法の提案をおこなう。 また、平成29年度において測定方法を確立した臨床用MRI装置の測定について、対応する患者がいれば測定を進めると共に、健常ボランティアを募り、正常脳における磁化率変化をSRSE-DWI, TRSE-DWIの両手法を用いて検討する。臨床研究では、放射線画像診断医である木下が中心となり、測定を行う。低いb値におけるDWI画像を利用して、脳血液量(CBV)を測定できるとの報告もあり、この手法についても中村が中心となり検討する。 測定結果の解釈をおこなうため、脳血管シミュレーションモデルにより、血管径画像法の妥当性も検証する。脳血管シミュレーションモデルは常磁性体の磁気遮蔽効果とプロトンの拡散距離を考慮にいれた解析モデルであり、中村が異なる磁化率において、推定される血管径がどの程度異なるかを導出する。脳血管シミュレーションモデルの計算画像と実測データを合わせて評価することで、血管径画像法で得られるコントラストがどういった生理学的意味を持つかを検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
東北大学動物実験施設の利用料の支払い方法や、登録方法について受入体制の整備に時間がかかり、動物実験を進めることができなかったため、平成29年度の使用額が予想より大幅に減少してしまった。受け入れ体制の整備が整い次第実験を開始するため、動物実験施設の登録料や利用料として、平成30年度に利用する予定としている。
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