研究課題
本研究の目的はMRI血管径画像法で得られる値が、拡散定数や血管内外の磁化率の差などに依存するため、その値の妥当性を検討することにある。本年度は主にコンピュータシミュレーションを用いて、MRI画像から妥当な血管径が得られることを確認した。また、炭酸ガス負荷を用いた動物実験から得られた結果に基づき血管径画像法の妥当性を検証した。脳血管を模擬したMRI拡散信号シミュレーションモデルでは,生理的条件に近いシミュレーションをおこなおうとすると計算時間が長くなってしまう。そのため、汎用画像処理装置(GPU)を用いてどの程度計算時間を短縮できるかを検討した。GPUには複数の並列化要素が用意されており、シミュレーションモデルによって適切な並列化方法は異なる。解析時間軸方向の並列化は行わず、スレッドとグリッドの数を等しく設定することで、計算時間はおよそ1/20に短縮された。最適化をおこなったMRI拡散信号シミュレーションモデルにより、単一収束パルス法(SRSE-DWI)と2回収束パルス法(TRSE-DWI)を組みわせることで,血管径イメージングが可能であるかを検討した。その結果、磁化率と均一な組織拡散係数を仮定すれば、血管半径をSRSE-DWIとTRSE-DWIの信号強度の組み合わせから一意に決定されることが確認できた。このことにより、2つの異なるシーケンスから得られたMRI拡散信号から血管半径を推定できることを示した。炭酸ガス負荷を用いた動物実験により、炭酸ガス反応性に関与している脳血管の部位を検討した。その結果、動脈内の炭酸ガス分圧とスピンエコー法で得られた値がよく相関しており、炭酸ガス反応性に関与している血管床が主に直径15μmの血管からなることを示唆した。このことは、開頭により侵襲的に測定した報告と一致する結果であり、MRIによる血管径画像法の妥当性を示しているといえる。
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APCMBE 2020, IFMBE Proceedings
巻: 82 ページ: 10-15
10.1007/978-3-030-66169-4_2
信学技報
巻: MBE2020-15 ページ: 15-18