研究課題/領域番号 |
17K10426
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
作原 祐介 北海道大学, 医学研究院, 客員研究員 (40374459)
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研究分担者 |
石川 正純 北海道大学, 保健科学研究院, 教授 (80314772)
曽山 武士 北海道大学, 大学病院, 助教 (00794059)
阿保 大介 北海道大学, 大学病院, 講師 (30399844)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | X線ひばく / 水晶体 / 被ばく防護 / 空間線量推定 / モンテカルロ法 |
研究実績の概要 |
ファイバー型X線線量計(SOF線量計:Scintillator with Optical Fiber Dosimeter)と患者ファントム、術者頭部ファントムを用い、様々な状況を想定した、リアルタイムでの水晶体被ばく線量率(マイクログレイ/秒単位)の計測実験を行った。 複数種のX線防護めがねを使用して遮蔽効果の実証実験を行った。我々の検証では遮蔽効果は10~20%強程度で、めがねのレンズの前後で計測した場合の遮蔽効果とされる50~80%(原子力規制委員会ホームページ、第3回放射線審議会 眼の水晶体の放射線防護検討部会 資料4 国際医療福祉大学 赤羽正章先生の報告より)と比較して大幅に低い可能性があることが判明した。理由として、レンズと水晶体の間に入り込むX線や、遮蔽物からの散乱線によるアルベド効果などが影響している可能性があると推測している。上述の報告は熱ルミネッセンス線量計で計測しているが、我々の線量計(シンチレータ)でも追加の実証実験を行い検証中である。この結果を踏まえて、計測に最も適した線量計の部位を検討する必要がある。 X線透視手技においては天吊り遮蔽板、鉛エプロンの遮蔽効果が非常に高く、これらの遮蔽物を用いると、線源からのX線の線量率が低い場合や、線源から離れて立つ場合など、状況によって水晶体の被ばくが線量計測誤差以下にとどまる可能性があることが判明した。 モンテカルロ法を用いた空間線量分布推定値との比較実験では、シンチレータでの実測値と近い数値を示すことがわかった。一方で、遮蔽物を用いた場合の計測値に乖離を生じることがあり、上記の防護めがねと同じく、鉛エプロンや天吊り遮蔽板のように遮蔽物の遮蔽効果の推測について再検証を要する可能性があることが判明した。 シンチレータで受光したX線を計測する本体もX線に反応するため、本体にも十分な遮蔽を要することが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
X線防護めがねは、レンズの表裏の位置では遮蔽効果が高くても、我々の当初の予想よりも実際には遮蔽効果が低いことが明らかになり、リアルタイムでの線量計の位置によって計測値が非常に大きく変化しうることが改めて判明した。 シンチレータは最も感度が高い線量計の一つだが、鉛エプロンや天吊り遮蔽板の使用によって、水晶体被ばくは大幅に低減される。防護めがねの使用によってさらに低減され、線量率は非常に低くなるため、過小評価や過大評価の可能性が予想より大きいことが判明した。 術者が本体を装着してリアルタイム計測を行う場合は、本体の十分な遮蔽が必要で、遮蔽の方法を検討する必要があることが判明した。
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今後の研究の推進方策 |
防護めがねのレンズの表裏、レンズと水晶体の間でも計測を行い、遮蔽物からの距離による被ばく線量を追加で検証する(現在までは防護めがねのフレーム表面と頭部ファントムの水晶体でのみ検証)。 モンテカルロ法での空間線量分布推定値との比較で乖離を生じた、遮蔽物の裏側での線量分布について追加で検証を行い、防護メガネの裏側での線量分布を推定可能かどうか検証する。この結果を踏まえて、できるだけ正確に水晶体被ばくを計測できる線量計の位置を検索する。 本体の遮蔽については、遮蔽が必要な場所や、遮蔽に用いる材料を選定し、試作品を使った実験を追加で行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度に予定していた実験の予定の変更、追加に伴い、実験にかかる費用(X線装置使用料、機器輸送費、旅費)が来年度へ繰り越しとなったため。 (モンテカルロ法での空間線量分布推定値との比較実証実験にかかる費用に用いる。)
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