研究課題/領域番号 |
17K10430
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
佐藤 まり子 弘前大学, 医学部附属病院, 助教 (30645263)
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研究分担者 |
廣瀬 勝己 一般財団法人脳神経疾患研究所, 南東北BNCT研究センター, 診療所長 (60623767)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 低酸素 / Metformin / CDDP / アポトーシス |
研究実績の概要 |
肝細胞癌(HCC)に対する肝動脈化学塞栓療法(TACE)後においては、その手技中に生じる低酸素環境が腫瘍細胞の治療抵抗性獲得に寄与し、さらには塞栓後の生残細胞からの幹細胞能の誘導にも関与していることが近年明らかとなってきた。局所再発を抑制してHCC患者の長期生存を達成するため、TACEの局所制御効果を高めることが課題となる。前年度までに、HepG2細胞が低酸素下ではCDDPの濃度依存性抗腫瘍効果を減弱することを明らかにした。 MetforminのHepG2細胞への毒性を評価するためMTSアッセイを行った結果、通常酸素下(21% O2)、低酸素下(1% O2)のいずれにおいても2mMまでは毒性を認めず、5mMで有意に細胞生存率が低下した。また、通常酸素下においてはCDDP単独とCDDP+1mMのMetformin併用で生存率に差はなく、いずれも濃度依存性の毒性を示した。一方、低酸素下ではCDDP単独では細胞毒性を認めなかったが、Metformin併用で濃度依存的に生存率が低下した。ほかにSAS、Ho-1-u-1、A549、HSC4、HUH-6細胞を用いて同様の評価をおこなったところ、SAS、Ho-1-u-1においてMetforminは低酸素細胞に対するCDDPの毒性を有意に増強した。ほかの3種でも同様の傾向がみられた。 アポトーシス解析では、通常酸素下でCDDP単独とMetformin併用とでアポトーシス細胞の割合は変化しなかったが、低酸素下でCDDP単独に比べてMetformin併用はアポトーシス細胞を有意に増加させた。 Metforminは、低酸素細胞におけるCDDP抵抗性を減弱することが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の目的は、「TACEとともにCDDPとMetforminを併用することでCDDPの抗腫瘍効果を高め、TACE後の局所再発を抑制することが可能であることを明らかにすること」である。これを達成するために必要な研究小課題として、当初、①CDDPおよびMetforminの細胞内ROS量への影響の評価、②CDDPおよびMetforminによる抗腫瘍効果の検討、③TACE/Metformin併用療法による再発抑制効果の評価、という3点を明らかにすることとして挙げた。 今回、Metforminが低酸素細胞におけるCDDP抵抗性を減弱することが明らかになった。小課題②についてはおおむね達成できたが、①についてはデータの収集と解析をすすめているところである。また、③については実験条件の検討をしている段階であり、確立までには至っていない。総合的にはやや遅れていると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
研究の目的達成のため、引き続きCDDPおよびMetforminの細胞内ROS量への影響の評価と抗腫瘍効果の検討を行う。具体的には、フローサイトメトリーにて細胞内ROS量の測定とMetforminの抗腫瘍効果発現経路を明らかにするためウエスタンブロット解析も行う。さらに、全身麻酔下に家兎の肝左葉へVX2腫瘍細胞を移植し、家兎VX2腫瘍モデルを作製してin vivo実験を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
講座実験室にある他の研究で購入した消耗品のストックを使用したために、経費節約となった。また、特にin vivo実験が当初の計画よりもやや遅れていることもあり、執行を見送ったため次年度使用額が生じた。 これまでの研究で、Metforminが低酸素細胞におけるCDDP抵抗性を減弱することが明らかとなった。Metforminの抗腫瘍効果発現に関与する因子探索のために、フローサイトメトリー、ウエスタンブロット解析、in vivo実験を行う予定であり、これに必要な消耗品の購入にあてる。
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