研究実績の概要 |
肝細胞癌(HCC)に対する肝動脈化学塞栓療法(TACE)後においては、その手技中に生じる低酸素環境が、腫瘍細胞の治療抵抗制獲得に寄与し、さらには塞栓後の生残細胞からの幹細胞能誘導にも関与していることが近年明らかとなってきた。局所再発を抑制してHCC患者の長期生存を達成するためには、TACEの局所制御効果を高めることが課題となる。 実験にはHepG2細胞を用いた。まず、CDDPの抗腫瘍効果に対する低酸素の影響をアポトーシス解析によって評価した。CDDPを0, 1, 5 μMでそれぞれ培地に投与し、通常酸素下で培養すると、24, 48時間後にはCDDP濃度に依存してアポトーシス細胞が有意に増加した。一方で、低酸素下ではこのようなCDDPの濃度による抗腫瘍効果の増強は認めなかった。 メトホルミンの毒性評価目的に行ったMTSアッセイの結果、通常酸素下、低酸素下のいずれにおいても2 mMでは毒性を認めず、5 mMで細胞生存率が低下した。アポトーシス解析では、通常酸素下においては、CDDP単独と比較してメトホルミン(1 mM)併用によるアポトーシス細胞の割合の変化は認めなかったが、低酸素下ではメトホルミンの併用がアポトーシス細胞の割合を有意に増加させた。細胞内ROS量の変化を評価する目的でフローサイトメトリーでの測定を行ったが、これまでに最適な実験条件の確立には至らなかった。 本研究では、低容量メトホルミンが低酸素HepG2細胞におけるCDDPの抗腫瘍効果を増強することが明らかとなった。低容量メトホルミンがTACEの局所効果向上につながる可能性がある。
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