研究課題
細胞実験について、肺癌細胞株を選定してPD-L1発現を行った。PD-L1発現は非小細胞肺癌で高い傾向があり、小細胞肺癌では低い結果であった。非小細胞肺癌の組織型でのPD-L1発現のバラツキの傾向は認められなかった。さらに、FDG取り込みとの関連を調べたが、非小細胞肺癌では、PD-L1高発現でFDG高集積の細胞株が見られたが、小細胞肺癌では相関を示す細胞株は認められなかった。昨年度は非小細胞肺癌の腫瘍検体におけるPD-L1発現とFDG集積の関係を検討し、FDG集積とPD-L1発現の有意な相関性の結果が得られた。小細胞肺癌の細胞株でPD-L1発現が低いことから、臨床検体を用いて、小細胞肺癌の腫瘍検体におけるPD-L1発現とFDG集積の関係を検討することにした。98例のFDG-PETが施行された小細胞肺癌の腫瘍検体を薄切してPD-L1,CD4, CD8,Foxp3で免疫染色を行った。PD-L1発現は臨床検体ではその発現は低かった(36.8%)。PD-L1発現とFDG集積は弱い相関を認めるのみであった。治療後の予後については、PD-L1発現では有意差はなく、FDG高集積群で予後不良であった。しかし、限局型の小細胞肺癌では、PD-L1高発現は予後不良因子となった。次に腫瘍内リンパ球における検討では、CD4およびCD8の腫瘍内リンパ球が少ない患者群で多い群に比べて有意にFDGが高集積の傾向が見られた。本研究では、なぜ腫瘍内リンパ球が少ないと糖代謝が盛んな原因は不明であった。
2: おおむね順調に進展している
非小細胞癌と小細胞癌とでの検討ができたことは意義があり、この分野では大切な情報と考えられる。細胞株では条件設定も難しく、実際の腫瘍検体の結果にうまく反映できるかどうかわからないが参考になると考えられた。
実際にFDG-PETが施行された臨床検体の結果でFDG集積とPD-L1発現を検討できたことはな重要な知見であるので、さらに糖代謝と腫瘍免疫の観点から、グルコーストランスポーター、低酸素マーカーとCD4, CD8, PD-L1の関係を小細胞癌で検討していく予定である。可能なら薬物療法の治療効果と予後との関連で検討していく予定である。
前年度購入した試薬にて当該年度の研究ができたら、次年度は新規の試薬購入による研究が必要のため次年度使用額が生じた。
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10.1016/j.humpath.2018.09.020.
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