研究課題
本研究の目的は、腫瘍内におけるPD-L1発現が、糖代謝や低酸素を何らかの関連性を持ち、FDG-PETによるmolecular imagingにてPD-L1発現の変化を検出できるかどうかを基礎的~臨床的に探索するTranslational researchである。まず、基礎的検討にて、非小細胞肺癌細胞株におけるPD-L1発現と糖代謝及び低酸素を評価した。PD-L1高発現と低発現の細胞株に対して、GLUT1とHIF-1発現を検討したところ、PD-L1高発現でHIF-1発現がやや高い傾向にあったが、統計学的に有意差は認めなかった。そこで、非小細胞肺癌の外科的切除された腫瘍組織にてPD-L1、GLUT1,HIF-1αおよび腫瘍内FDG集積におけるSUVmaxの関係を検討した。130例の肺扁平上皮癌、320例の肺腺癌の検討では、FDG集積とPD-L1発現は有意な相関を認め、PD-L1発現はGLUT1とHIF-1α有意な相関関係を認めた。しかし、CD4, CD8, Foxp3など腫瘍内リンパ球浸潤とは関連は認めなかった。これらの基礎的病理学的検討を踏まえた上で、抗PD-1抗体で治療をうける進行非小細胞肺癌患者に対して治療前後におけるFDG-PETの効果判定の有用性を評価する臨床試験を計画し遂行した。当初の予定より症例数を58例にして多施設共同研究として開始した。まだ、40例と予定症例数を満たしておらず最終解析はできていないが、1か月後のFDG集積は低下する症例は奏効しており、明らかなFDG集積を伴う増悪を認めている症例は3か月後に増悪し、抗PD-1抗体を中止せざるを得ない症例がみられた。免疫組織学的な側面を重視して検討したが、PD-L1発現は糖代謝および低酸素と密接な関係にあると言える。FDG-PETによる抗PD-1抗体の治療効果判定は臨床試験の結果が待たれる。
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