研究課題/領域番号 |
17K10436
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
蒲田 敏文 金沢大学, 医学系, 教授 (00169806)
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研究分担者 |
吉田 耕太郎 金沢大学, 医学系, 助教 (30645130)
土屋 弘行 金沢大学, 医学系, 教授 (40227434)
南 哲弥 金沢大学, 附属病院, 准教授 (60436813)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 癌 / 動脈塞栓術 / 免疫療法 / 凍結療法 |
研究実績の概要 |
放射線科領域では日常臨床としてアブレーション治療ととも選択的動脈塞栓術あるいは選択的動注による局所の抗癌治療も行っている。凍結療法は悪性腫瘍に対する局所アブレーション治療の一つであるが、原発巣の凍結療法後に遠隔転移巣が縮小することがあり、凍結免疫の関与が推測されている。本研究では、免疫賦活療法を併用した局所治療により、より効果的な抗腫瘍治療システムを構築することを目的としている。 免疫賦活の方法として局所の腫瘍凍結療法を組み合わせることは非常に有望な方法と考えられる。しかし、動物モデルで深部臓器に対して経皮的な腫瘍凍結療法の実験を行うことは容易ではなく、反復して実施し、安定した実験結果を導き出すことは困難と予想された。そこで、凍結療法の手技手法は古典的な外科的凍結療法を用いて行うこととし、そこに免疫賦活物質や免疫細胞の投与を経血管的選択的注入を中心とした投与方法で併用し、その効果を検討することとした。 動物モデルとしては、選択的な経血管的薬剤注入が可能で、かつ外科的凍結療法も施行可能と考えられる兎VX2腫瘍モデル(肝および大腿皮下)を用いる方針とした。本年度は、まず選択的肝動注の手技を一定化させることを試みた。腫瘍非移植家兎に対して、血管造影の手技を用いて肝動脈選択を行い、DSAにて血管の走行や描出を確認した。そこで、sham controlとしてエバンスブルー(色素)を動注し、屠殺後に開腹して色素の分布や濃度のDSA像との一致について肉眼的及び定量的に確認した。腫瘍モデルについては、VX2腫瘍を一定量皮下に植え込みモデル作成を試みたが、生着腫瘍サイズが一定ではなく、不均一性の問題が解消されなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画では、家兎VX2 腫瘍モデルの深部腫瘍(肝腫瘍・腎腫瘍)に対して経皮的に凍結療法を行う予定であったが、反復して実施し、安定した実験結果を導き出すことは困難と予想されたため、外科的凍結療法を用いて行うことに変更した。 本年度は、まず選択的肝動注の手技を一定化させることを試み、腫瘍非移植家兎を用いて血管造影像と薬剤分布の関係についても一定の成果を得た。そこでVX2腫瘍を家兎大腿の皮下に植え込み腫瘍モデルの作成を試みたが、生着腫瘍サイズが一定ではなく、不均一性の問題が解消されなかった。そのため、定量的評価を行うモデルが得られず、凍結療法併用による効果を評価する段階にまで至らなかった。 したがって、予備的な動物実験の成果を得ているが、最終的な本研究の評価まで至っていない点から、(3)の「やや遅れている」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
血管造影による選択的動注の手技は確立されたため、腫瘍非植え込み兎を用いて外科的凍結療法の手技を確立する。開腹下に液体窒素を一定量用いた凍結処理を行う予定である。兎VX2モデルについては、腫瘍の不均一性の問題が解決されない場合、腫瘍植え込みモデル兎を購入することで実験対象の均質化を試みる。 免疫賦活剤については、まず古典的に兎VX2モデルで用いられていたピシバニール(OK-432)を使用する。OK-432の投与方法として、選択的動注療法(ワンショット)や、選択的塞栓療法(球状塞栓物質などを用いた薬剤徐放性塞栓)、直接穿刺による注入などを予定している。 これら手技が確立した時点で、兎VX2腫瘍モデル(肝および大腿皮下)を用いて、凍結免疫療法および局所免疫賦活療法を肝腫瘍で行い、大腿皮下腫瘍の縮小効果、血清免疫活性因子の変動、および予後の評価を行う予定である。その際、肝腫瘍に対する局所療法として、生理食塩水投与のみ、凍結療法のみ、凍結療法+OK-432動注(ワンショット)、OK-432動注(ワンショット)のみ、凍結療法+OK-432塞栓療法、OK-432塞栓療法のみ、OK-432直接注入(直接穿刺)の群を作成して評価する予定である
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)VX2腫瘍を家兎大腿の皮下に植え込み腫瘍モデルの作成を試みたが、生着腫瘍サイズが一定ではなく、不均一性の問題が解消されなかった。そのため、定量的評価を行うモデルが得られず、凍結療法併用による効果を評価する段階にまで至らなかった。その結果、本年度予定していた一部の実験を実施することができず次年度に持ち越すこととなり、次年度使用額が生じた。 (使用計画)兎VX2モデルについては、腫瘍の不均一性の問題が解決されない場合、次年度使用額を用いて腫瘍植え込みモデル兎を購入することで実験対象の均質化を試みる。また、腫瘍非植え込み兎を用いた外科的凍結療法の手技の確立については、腫瘍モデル作成と並行して進めることが可能である。血管造影による選択的動注の手技は確立されているため、腫瘍モデルの均質化が得られれば、平成30年度に予定している実験は速やかに遂行できるものと考えている。
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