研究課題
放射線治療は急速に進歩しているが、治療効果を高める増感剤の開発は放射線治療の適応拡大に必須である。過酸化チタンナノ粒子はそのような放射線治療の増感作用を有する物質の一つであるが、20-200nmサイズの粒子が作成可能であり、EPR(Enhanced Permeation and Retention)効果が期待できる。EPR効果とは、腫瘍組織では正常血管内皮細胞よりも広い間隙(約200nm)が開口しており、またリンパ管が未発達で排出が困難なために、20 - 200 nm程度の粒子製剤は腫瘍組織内に長時間滞留・残存する特性のことであり、現在の抗腫瘍薬のドラッグデリバリーシステムの研究において最も重要な因子の一つである。しかし、我々の先行研究においてはマウス尾静脈から投与された100nmの過酸化チタンナノ粒子は腫瘍に高く集積したが、それは総投与量の数%に過ぎず、多くは肝や肺などに集積・排出された。そのため、腫瘍への集積効率の向上、非標的臓器への集積の低減が未解決の課題である。そのため、物質の投与法として、実地臨床で既に普及している経動脈的な薬剤注入(動注療法)、さらには静脈からの薬剤回収(灌流療法)を用いることで、この課題を解決し、臨床応用へとつなげることが今回の研究目的である。主に膵癌などの体内深部の臓器に対し、動注は優れたdrug delivery systemであり、この研究のもつ意義は高い。実験結果としては、ウサギモデルを用いて動注療法および還流療法を用いたナノ粒子注入を行ったが、静注と比して有意な集積亢進を得ることができなかった。動注療法だけではナノ粒子の集積亢進を得るのは難しいと考える。
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