最終年(令和元年)は申請者が前年度までに開発してきた腹部CTデータから得られたCFD仮想血管塞栓モデルを用いて、コンピュータ上で原発性肝細胞癌の血行動態のモデル(仮想肝細胞癌モデル)を作成し、球状高吸収性ポリマー(ビーズ)の特徴から得られたパラメーターを入力し血管塞栓術のコンピュータシミュレーションを行い、ビーズがどのように肝細胞癌内に分布されるかについて検討した。さらに、個々の患者において、本手法によって血管塞栓術の治療効果が予測を治療後の造影CTと比較検討を行った。結果はSTLイメージから血管モデルを作成したが、腫瘍と腫瘍血管を分離することがやや困難であった。CFDの中で混相(血液とビーズ;個体)のシミュレーションを行ったが、ビーズの密度が血液より低いことが検証中に判明し、重力方向を加味した計算が必要となり分析が難渋したが、治療術中のイメージがより再現できた。具体的には、ビーズは血液より比重が軽く仰臥位の状態で治療を行うとより腹側に分布することが確認された。ビーズの肝細胞間内の定量化は出来なかったが、実際にカテーテル治療を行ったポイントでのシミュレーションではビーズの腫瘍内分布が良好であった。治療後CTでの評価(壊死効果)とシミュレーションでの腫瘍内のビーズ分布は相関している印象であった。3年間の本研究を踏まえて、ビーズを用いた原発性肝細胞癌に対する経カテーテル的治療を行う前に、事前に得られた個々の原発性肝細胞癌の血行動態モデル作成と続く仮想血管塞栓術を行うことで、実際により効果的な血管塞栓術を行う可能性が期待される。
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