研究実績の概要 |
PETやSPECTを用いた分子イメージングは分子プローブと呼ばれる放射性薬剤のタイ内分布を測定することにより、生体内分子である酵素や核酸などに制御される代謝を画像化することができる。 本年度は神経伝達機構で重要な役割を担う脳ドパミントランスポータ(DaT)の分子イメージングについて検討した。パーキンソン病(PD)とレビー小体型認知症(DLB)はドパミンニューロンが変性する神経変性疾患であるが、臨床的には鑑別が困難な場合がある。ドパミンニューロンの活性は分子イメージングにより可能であるが、従来から行われているDaT活性の測定のみならず空間的不均一性の評価が有用な可能性がある。 対象はPD患者22名、DLB患者22名の合計44名であり、88側の線条体を後ろ向きに倫理審査委員会による承認を得て解析した。分子イメージングは分子プローブ123I-FP-CIT投与後にSPECT撮像を行った。DaT活性の程度は分子プローブの線条体集積をSBR(Tossici-Bolt法)にて評価出した。DaT活性の不均一性はテクスチャ解析(global, regional, local)にて40個の特徴量にて評価した。 DaT活性の程度をSBRでみると、PDは平均3.38、DLBは平均3.11とPDがDLBより高い値となったが有意差は認めなかった。また、前後比、左右比も有意差は無かった。次に、DaT活性の不均一性も加えた全特徴量41個によるradiomics解析では、単変量解析では9個の特徴量において有意差が見られ、これらの特徴量はROC解析においても比較的高い値を示した。多変量解析では5つの特徴量において有意差が見られた。 以上の結果より、ドパミンニューロン分子イメージンは不均一性評価を追加することでPDとDLBの鑑別診断が可能となる可能性が明らかとなった。
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