研究課題/領域番号 |
17K10447
|
研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
工藤 崇 長崎大学, 原爆後障害医療研究所, 教授 (20330300)
|
研究分担者 |
井手口 怜子 長崎大学, 原爆後障害医療研究所, 助教 (10457567)
西 弘大 長崎大学, 原爆後障害医療研究所, 助教 (10719496)
上谷 雅孝 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 教授 (40176582)
前村 浩二 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 教授 (90282649)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 心筋血流 / 核医学検査 / 位相解析 / 虚血評価 |
研究実績の概要 |
2019年度は過去症例後ろ向きデータ解析を行った。70例の薬物負荷心筋血流シンチグラフィ症例に対して通常の画像診断に加えて、位相解析を用いた検討を行った。位相解析のパラメーターのうち、BandwidthとPhase SDが虚血例と非虚血例の間に有意差を持って異なっていることが明らかとなった。一方、位相解析パラメーターのうちEntropyについては期待に反して有意差を見いだすことが出来なかった。これらの結果から、位相解析によるBandwidthおよびPhase SDの情報を通常の心筋血流シンチグラフィに追加することによって、診断精度の向上が期待できることが判明した。この結果は、特別な高額な装置を用いることなく達成可能であり、特に患者に追加の身体的・経済的負担を負わせることなく実施可能である。医療経済的影響を最小に抑えて、診断精度を向上させることに寄与できると考えられた。Entropyが有意差を示さなかったことについては、今回の症例が虚血の軽症例ばかりであったことが一因と考えられたため、今後の前向き症例追加で重症虚血例の追加を試みる。 また、心筋血流シンチグラフィに利用されるテクネシウム系心筋血流製剤の定量を妨げる心筋以外の集積に関して、これを改善するためのラットによる動物実験を行った。シメチジンを検査前に投与することによって、画質の低下の大きな原因である肝臓へのRI集積が有意に低下することが明らかとなった。動物実験ではあるが、シメチジンの検査前投与が、臨床の心臓核医学検査の精度向上に寄与できる可能性が示唆された。シメチジンは極めて安価な薬剤であることから、こちらも医療経済的な負担の増大無く診断精度の向上に寄与できると考えられた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
後ろ向き間接研究の部分については症例の解析が順調に進んでおり、一部についてはすでに論文投稿の準備中であり、計画よりも進んでいると考える。また、検査の定量精度の向上のために、動物実験を追加したため、予定よりも研究の範囲も広がっている。一方、前向き検討については、研究計画の段階で実行段階に至っておらず遅れていると考える。これについては、前向き検討であることに伴う倫理審査等の要素が大きい。後ろ向き研究については、今後も同様に進めていくが、前向き研究を実行するために、研究協力者を追加することで、人的なサポートの増加を図ることを考える。現在、大学院生の募集中であり、これによって体制を整える予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
後ろ向き研究については、今後も同様に進めていくが、前向き研究を実行するために、研究協力者を追加することで、人的なサポートの増加を図ることを考える。現在、大学院生の募集中であり、これによって、研究速度を上げることが出来ると考える。前向き研究については進行が遅れているが、これについては本年度中に倫理審査を通すことによって、実施につなげていくことを目的とする。また、予備的に行った動物実験が、臨床応用の期待できる結果を示したため、これを臨床に応用するための臨床研究計画の立案を追加で行うこととする。
|
次年度使用額が生じた理由 |
主に人件費・謝金が発生しなかったことに伴うものである。研究計画の一部遅れに伴い、人件費を必要とする研究支援の必要が生じなかった。平成30年度については、研究計画の遅れを取り戻すために、研究補助員などの雇用によって、技術的側面からの研究の支援を行う体制を整える予定であり、このために人件費が発生する予定としている。 また、旅費が予定よりも低かったことも一つの要因である。これについては、平成29年度の研究実績を平成30年度に複数回の学会報告など行うことを予定しており、このために使用する予定である。
|