核医学画像は,他の放射線検査のモダリティでは画像化できない臓器の機能情報を取得することができるが,臓器の詳細な構造を抽出する点において他のモダリティに比べて制約があった.本研究では,近年着目されている深層学習を用いた超解像技術と独自に作成したデータセットにより,空間分解能の低い核医学画像の画質改善手法の検討を行った. その結果,主観評価と数値評価ともに良好な成果があった.主観評価においては核医学画像では濃度が低く分解能が低下している部位が不鮮明であるのに対し,AI画像ではその部分が抽出されており,オリジナルの教師画像に近づいているが示された.数値の定量評価では,入力の核医学画像と比較して,深層学習した出力画像は,PSNR(peak signal-to -noise ratio)が 4.53,SSIM(structural similarity)は 0.143の向上が見られた.これらのことから核医学画像と比較してAI画像の画質が向上したことを示した.また,本手法で提案したデータセット作成法では,容易に入手可能な自然画像の追加が可能であり,医用画像データセットの拡充に有用性があった.本研究の手法は,「低解像度コリメータの画像」から「高解像度コリメータの画像」を生成する手段を,ファントム実験によって明らかにし空間分解能の低い核医学画像の画質改善に寄与できた. 以上より,超解像技術によって核医学検査の診断に定量情報を与え,その診断能向上に寄与する可能性を示した.加えて,画像生成の過程を多元的に捉えることで,実際にはソフトウェアのみで画像改善を実現する点に意義があった.本研究により,人工知能技術の新たな可能性を見出し,核医学画像の定量化ソフトウェア開発の基盤となった.
|