研究課題/領域番号 |
17K10456
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研究機関 | 関西医科大学 |
研究代表者 |
狩谷 秀治 関西医科大学, 医学部, 准教授 (40368220)
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研究分担者 |
谷川 昇 関西医科大学, 医学部, 教授 (90227215)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | インターベンショナルラジオロジー / キャビテーション / ナノバブル |
研究実績の概要 |
本研究全体の目的は高密度CO2ナノバブル含有液生成器の実用機を制作し、この器具による生体内ナノバブル投与が、生体内で利用できるキャビテーション効果を生じさせることを動物実験で証明することである。 H30年度までに特許出願のため試作したバブル生成器を実用的なものに改良し製作した。またこの生成したナノバブルが生体内で有効に使用可能であると確認することを目的とし、生理食塩水内にナノバブルを生成し目視で確認することを終了した。これは我々が所有する循環ファントムで生理食塩水を循環させ試作したナノバブル生成器で生成したナノバブルを注入し、チューブポンプを使用した拍動のある(圧変動のある)循環液体中でもバブルを保つことが可能であると確認した。さらにナノバブルを循環させた後、超音波発生装置(SZ-100、ミナト医科学)で超音波を照射するとキャビテーションを生じさせることが可能であることを確認した。本年度には血液循環でも同様のキャビテーションを生じさせることを可能と判断する実験を進めた。動物実験にて生体内に血栓を生じさせこの血栓をキャビテーションで破砕、溶解させる実験を行う予定であるが、人新鮮血液の循環回路で代替実験が可能であれば使用する動物を減らすことができると考えられた。したがって本年度は血液内にナノマイクロバブルを注入し、超音波を照射しキャビテーションを生じさせる実験をインビトロで行うための人新鮮血を用いた循環回路を製作した。これにより生じた人新鮮血流内で生じた血栓に対してナノマイクロバブルを注入し、超音波を照射しキャビテーションを生じさせ血栓を溶解させる実験系を確立した。この実験回路は本研究に限らず、他の研究でも使用できる人新鮮血液循環回路として使用できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
人新鮮血液での循環回路を今後使用するにあたり、本実験で使用できる設備を有し借用できる施設を選定した。施設はテルモ株式会社愛鷹工場内の実験室とした。回路は医療用延長チューブSFET5527×2セット,SFET3825L、Y型コネクター(APXYC15S)、ネラトンカテーテル18Fr.(SF-ND1810)、三方活栓(TS-TR2K)で作成。血液バッグを回路内に接続しこのバッグをプールとした。血液バッグは恒温水槽に沈め37度に保つように設定した。チューブSFET5527の両端にY型コネクター(APXYC15S)を設置しここから血管に模したチューブSFET5527Yにカテーテルを挿入できるようにした。使用したカテーテルはポリウレタン製カテーテル(LG61X16SS)を使用した。この回路にボランティアから採取した新鮮血液100mLにヘパリンを5000単位混和したものを循環させた。Yコネクターからカテーテルを挿入した。3時間循環させて循環の持続が可能であることが確認できた。また血栓の形成状態も確認した。この実験には研究代表者を含む6人のボランティアがドナーとなり実験施設まで出向き新鮮血を供血した。 ナノバブル注入、超音波照射による生体内でのキャビテーションが実現できる可能性が高まったのでソノポレーションによる薬剤の細胞内取込みを検証する実験の検討を開始した。実験計画では放射性同位元素の取り込みとしたが現在まで製作した機器からすると実験動物は家兎でなく豚を用いることが望ましいと予測している。しかし豚は大きく本学所有のSPECT検査ができない。経カテーテル的にシスプラチンを豚肝動脈にナノバブルと同時に注入し、超音波照射の有無での比較実験を検討している。
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今後の研究の推進方策 |
循環回路内に人新鮮血液を循環させ、Yコネクターからカテーテルを挿入する。カテーテルからナノバブルを注入する。超音波照射を行う回路と行わない回路で一定時間循環させる。回路内、カテーテルに付着の血栓量を比較する。これはキャビテーション効果による血栓溶解を見る実験である。このインビトロの実験と並行して豚を用いたソノポレーションによる細胞内薬剤取り込みの実験を行う。豚を全身麻酔下で開腹し、さらに大腿動脈からアプローチし肝動脈にカテーテルを挿入する。このカテーテルから開発したナノバブルとシスプラチンを同時に注入する。開腹し露出した肝臓のナノバブルとシスプラチンを注入した領域の一部に超音波照射を行う。この照射した領域の肝組織を切り出し、シスプラチン濃度を測定する。同じく注入した領域内の照射していない領域の肝組織を取り出しシスプラチン濃度を測定する。一部に本年までにナノバブル精製、生体内投与、キャビテーションの発生に成功していると考えインビトロとインビボの両実験を並行して行うことにより有意な実験結果を得る可能性を高めることにした。インビトロでの実験で成果を得ることも本研究における部分的な成功と言える。インビボでの成功が得られれば計画通りの成果が得られたと言える。
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次年度使用額が生じた理由 |
ソノポレーションの効果をインビボで行う方法を家兎から豚に変更し、放射性同位元素による評価から組織内シスプラチン濃度の評価に変更した。このため次年度使用額が生じた。放射性同位元素の購入費を実験動物に充当する。
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