本研究の目的は、二酸化炭素マイクロナノバブルを大量に体内に注入し、超音波を照射することで、生体において実用レベルのソノポレーションが実行可能であることを証明することである。 使用した動物はメスの豚は9頭であり、実験は全身麻酔下で行われた。 二酸化炭素マイクロナノバブルの生成には、マイクロナノバブル発生装置が使用された。二酸化炭素マイクロナノバブルと薬剤の注入は肝動脈から経カテーテル的に行われた。二酸化炭素マイクロナノバブルとシスプラチン100㎎が10分かけて動注され、開腹下にて肝表面から超音波照射が動注の間行われた。動注直後に豚は安楽死させられ、超音波を照射した肝組織と照射していない肝組織が切り出された。切り出された肝組織断面の異常の有無が肉眼的に評価された。シスプラチン濃度の上昇は白金の濃度上昇として評価された。組織の白金測定方法は Inductively Coupled Plasma Mass Spectrometry により行われた。照射群と非照射群の肝組織内白金濃度がWilcoxon signed-rank testにより比較された。 照射群の肝組織内白金濃度の平均±SDは6.260*103±2.070 ng/gであり、非照射群のそれは3.280*103±0.430 ng/gであった。肝組織の白金濃度は超音波照射群のほうが非照射群より有意に高かった(p = 0.004)。いずれの検体においても採取した肝組織に肉眼的な異常所見は認められなかった。 豚生体肝内にマイクロナノバブルを大量に存在させて超音波照射をすると、ソノポレーション効果により投与したシスプラチンの組織内濃度を上昇させることが可能であった。大量にマイクロナノバブルを存在させれば生体でも実用レベルのソノポレーション効果が生じた。
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