研究課題/領域番号 |
17K10459
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研究機関 | 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 |
研究代表者 |
渡辺 茂樹 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 高崎量子応用研究所 放射線生物応用研究部, 主幹研究員(定常) (10450305)
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研究分担者 |
山田 圭一 群馬大学, 大学院理工学府, 准教授 (70323334)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | アスタチン / ケイ素―ハロゲン交換反応 / アミノ酸 |
研究実績の概要 |
前年度は、ケイ素アミノ酸前駆体の合成とBr-77, I-131, At-211を用いた標識実験を実施した。ケイ素アミノ酸前駆体としてN末端、C末端を保護したケイ素フェニルアラニン誘導体(N-tert-butoxycarnonyl-(4-tributylsilyl)-L-phenylalanine methylester)および脱保護した誘導体(4-triethylsilyl-L-phenylalanine)を合成した。次に得られた前駆体とエタノール中TBHC存在下室温で10分間Br-77を標識し薄層クロマトグラフィー(TLC)で分析した結果、標識率86%で標識できることを明らかにした。一方で、同条件でI-131およびAt-211を標識し高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で分析した結果、目的物は検出されず反応はほとんど進行しないことが分かった。次に、NCS存在下でBr-77, I-131, At-211をそれぞれ標識した結果、HPLCによる分析から反応が進行し、目的物が生成することが分かった。一方、脱保護したケイ素フェニルアラニン誘導体を前駆体とした場合、トリフルオロ酢酸中で標識反応を行った結果、At-211では標識率64-75%でそれぞれ反応が進行することが明らかとなった。酸化剤とハロゲンとが形成する反応中間体は、それぞれTBHCの場合ではRO-X(X = Br, I, At)、 NCSはN-Xとなることが考えられるが、以上の結果からハロゲンの種類によって有用な酸化剤が異なる可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度の計画のうちケイ素前駆体合成について、合成できていない化合物もあるものの多くの化合物は合成あるいは購入できた。当初の予定では、反応中間体を明らかにする予定であったが、ケイ素―アスタチン交換反応が多くの化合物で有用であることを明らかにするために、計画を変更しケイ素アミノ酸前駆体を用いた交換反応に関する研究を先に実施した。その結果、ハロゲン元素ごとに有用な酸化剤の種類が異なる可能性が示唆される結果が得られたことから、本年度実施する反応中間体を明らかにする実験における有用な知見が得られたと考えている。従って、研究全体としておおむね順調に推移したと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今年度サイクロトロンが修理のため停止することから、放射性臭素およびAt-211を用いた実験がほとんど実施できない可能性が高い。そこで、今年度は、昨年度得られた知見を基に、シクロヘキサノンや2-ブテン等の不飽和脂肪酸を用いて反応させ、ガスクロマトグラフィー等を用いた生成物分析から反応中間体を明らかにするコールド実験を中心に行う。また、購入できるI-131を用いて経過時間に対するケイ素―ハロゲン交換反応の速度論的アプローチが可能かどうか実証試験を実施する。加えて、ケイ素前駆体を合成し、コールド実験およびI-131を用いた反応実験を実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
前年度、当初の計画を変更しケイ素アミノ酸前駆体を用いた交換反応に関する研究を先に実施したため、予定していた機器の部品等の購入を実施しなかった。当該助成金は今年度、使用する予定である。
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