研究課題/領域番号 |
17K10459
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研究機関 | 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 |
研究代表者 |
渡辺 茂樹 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 高崎量子応用研究所 放射線生物応用研究部, 主幹研究員(定常) (10450305)
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研究分担者 |
山田 圭一 群馬大学, 大学院理工学府, 准教授 (70323334)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ケイ素ーハロゲン交換反応 / 放射性ハロゲン / アスタチン / RI標識 / α線治療 |
研究実績の概要 |
アスタチン-211(At-211)は、次世代のがん治療法であるα線内用療法での利用が期待されている。At-211薬剤合成で不可欠な標識反応では、スズ―アスタチン交換反応が広く用いられているが、臨床利用を実現する上で新たな標識反応を見出すことが課題となっている。そこで、本研究では、新たな標識反応としてケイ素―アスタチン交換反応に着目し、速度論的アプローチから反応性を定量的に評価し、多種多様な薬剤候補化合物への標識法として汎用性を高め、211At内用療法の発展に貢献することを目指している。当該年度では、ケイ素フェニルアラニン誘導体 (4-トリエチルシリル-L-フェニルアラニン)を前駆体として、2種類の異なる回収液(クロロホルム、N-クロロスクシンイミド―メタノール混合液)で回収したAt-211を用いて合成実験を行った。その結果、N-クロロスクシンイミド―メタノール混合液で回収したAt-211を用いた場合では、中間体を経由して目的物が生成することが明らかとなった。この結果は、At-211の化学形の違いによるものと考えられる。また、合成したAt-211標識フェニルアラニンを用いて大腸がん細胞への取込み実験を行った結果、At-211標識フェニルアラニンは、がん細胞特異的に取り込まれることが明らかとなった。アスタチンには安定同位体がなく、取り扱う化学量も極めて微量(fmol程度)であることから従来の分析機器を用いた化合物の同定が困難である。しかし、標的との親和性がわかっている場合には、細胞実験もAt-211標識化合物の同定に有用であることが示された。これらの研究成果についてはα線内用療法に関する国際学会で発表するとともに化学系の学術誌にて発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当該年度は、ケイ素アミノ酸前駆体を用いたAt-211標識フェニルアラニン合成に関する研究成果について国際会議での発表と論文発表することができ、ケイ素―アスタチン交換反応の有用性を広く発信することができた。しかし、サイクロトロンの修理に伴う放射性臭素やアスタチンが利用できなかったため、RIを用いた実験を実施することができなかっただけでなく、当初予定であった速度論的アプローチの観点から実施する反応実験が予定通り進行しなかったため、研究全体として計画よりもやや遅れていると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
平成31年度にサイクロトロンの利用が再開することから、放射性臭素およびAt-211を用いた実験を実施する。加えて、研究分担者からのAt-211供給を計画し、サイクロトロン安定して実験を実施できる体制として研究を進める。また、実施予定であったシクロヘキサノンや2-ブテン等の不飽和脂肪酸を用いて反応させ、ガスクロマトグラフィー等を用いた生成物分析から反応中間体を明らかにするコールド実験と、RIを用いたホット実験を並行して進めケイ素―ハロゲン交換反応の速度論的アプローチからの反応の有用性を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度はサイクロトロンの修理に伴ってRIを用いたホット実験が実施できなかったため次年度使用額が生じた。平成31年度は実施できなかったコールド実験およびホット実験にかかる費用とともに、研究分担者からの供給にかかる費用として充てる予定である。
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