研究課題/領域番号 |
17K10461
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研究機関 | 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 |
研究代表者 |
羽鳥 晶子 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 放射線医学総合研究所 標識薬剤開発部, 主幹研究員(任非) (20531528)
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研究分担者 |
謝 琳 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 放射線医学総合研究所 標識薬剤開発部, 研究員(定常) (30623558)
藤永 雅之 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 放射線医学総合研究所 標識薬剤開発部, 主任研究員(定常) (70623726)
張 明栄 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 放射線医学総合研究所 標識薬剤開発部, 部長(定常) (80443076)
山崎 友照 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 放射線医学総合研究所 標識薬剤開発部, 研究員(定常) (80627563)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | モノアシルグリセロールリパーゼ / MAGL / ポジトロン エミッション トモグラフィー / PET |
研究実績の概要 |
平成30年度では、昨年度に続き[11C]SAR1を用いて脳虚血モデルラットの脳内モノアシルグリセロールリパーゼ(MAGL)をPETにより画像化し、病態とMAGLの活性変化との関連を明らかにすることを目的として研究を継続した。 脳虚血モデルでは、術後4日において虚血側脳半球への[11C]SAR1の取り込みは対側に対し約60%に減少していた。神経保護作用のあるミノサイクリンもしくはMAGL阻害剤として広く用いられているKML29を用いて脳虚血モデルラットを処置した場合、虚血側脳半球への放射能の取り込みが増加した。また炎症マーカーであるTSPOのPETプローブ、[18F]FEBMPを用いて脳PET撮像を行ったところ、虚血側脳半球への[18F]FEBMPの取り込みが、無処置群に対しミノサイクリンもしくはKML29による処置群では減少していた。PET撮像後の脳を採取し、薄切切片を用いて免疫染色および組織染色を行い、MAGL、TSPO発現部位と組織損傷部位との関連について検討を行った。これらの結果、脳内炎症の軽減と [11C]SAR1の取り込みに関係がみられ、[11C]SAR1によるPET画像化は、脳内MAGLと炎症の関係をとらえるのに有用であると示された。 また、MAGLの新規PETプローブとして、piperizinyl azetidine骨格を持ちMAGLと非可逆的結合をする[11C]MAGL-2-11,および可逆的結合をする[11C]PADおよび[18F]MAGL-4-11を合成し、ラット・マウスの体内動態について比較した。[11C]MAGL-2-11は脳への取り込みも高く、MAGLと特異的な結合を示した。[11C]PADおよび[18F]MAGL-4-11は、脳内への取り込みは低く、末梢組織でMAGLと特異的結合を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
理由 平成30年度の研究について 1.[11C]SAR1を安定的に合成して、動物試験へ提供することができた。 2.新規PETプローブとして、数種の11Cおよび18F標識プローブを合成し、PET試験を実施した。候補プローブ間で比較する場合には、さらに組織内分布や代謝分析試験等を加え、検討を行った。 3.脳虚血モデルラットのPET試験を行い、[11C]SAR1により脳内MAGLを画像化し、病態の進行とMAGL活性変化との関連について研究を行ってきた。治療薬ミノサイクリンまたはMAGL阻害剤KML29で処置した場合に、脳内炎症の軽減と[11C]SAR1の取り込み増加がみられた。さらに脳内MAGLと炎症の関係を明らかにするため、TSPOのPETプローブ[18F]FEBMPを用いた試験および免疫染色等の生物化学手法を用いた評価を行ってきた。 4.肥満モデル動物のPET試験については、これから行う予定です。
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今後の研究の推進方策 |
1.脳虚血モデルラットを用いて [11C]SAR1を投与し脳内MAGLをPET画像化し、神経炎症と脳内MAGLの活性変化との関係を明らかにする目的で研究を進めてきた。治療薬による処置を行った場合の結果を加え、TSPOのPETプローブ[18F]FEBMPを用いたPET試験から炎症部位への取り込みに関する情報も得た。さらに脳切片を用いた免疫染色や組織染色等の生物化学手法を用いた検討を行っている。今後、これらの結果をまとめて発表する。 2.[11C]SAR1の安定合成及び新規プローブの標識合成。動物実験に[11C]SAR1を安定的に合成し、提供する。また探索した有望な化合物候補に対し、11C/18Fによる標識を行う。 3.新規PETプローブの評価。正常動物を用いたPET試験により、脳及び末梢組織のMAGLを可視化し、候補プローブのin vivoプローブとしての性質を評価する。 4.肥満モデル動物のPET試験を行う。Zuckerラット(FattyおよびLean)に[11C/18F]プローブを投与し、胴体を中心にPET撮像を行ない、褐色脂肪および主要臓器の時間放射能曲線を求める。FattyおよびLeanラットにβ3アドレナリン受容体アゴニストを投与し、褐色脂肪を活性化した場合のPET撮像を行ない、放射能の取り込みを画像解析および時間放射能曲線を求め、グループ間で比較する。MAGLの活性変化および脂質代謝障害について検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成30年度も実験を行うための物品費が大部分であったが、実験の遅れのため、肥満動物Zucker ラットの購入費が次年度に繰り越された。物品費として化学合成、標識合成および動物実験に使用する薬品、材料、実験動物が含まれている。化学合成と標識合成の反応追跡及び目的物の精製は主に 液体クロマトグラフィ(HPLC)より行われているため、HPLCカラム等の経費、また、動物による評価を行うため、動物や餌などの購入費用の使用を予定している。
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