研究課題/領域番号 |
17K10462
|
研究機関 | 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 |
研究代表者 |
長谷川 純崇 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 放射線医学総合研究所 重粒子線治療研究部, チームリーダー(定常) (60415437)
|
研究分担者 |
永津 弘太郎 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 放射線医学総合研究所 標識薬剤開発部, 研究統括(定常) (30531529)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 放射免疫療法 / アルファ線 |
研究実績の概要 |
本研究課題は、転移性がんを治療標的とし、高い細胞殺傷能を有する粒子放射線のアルファ線を用いたアイソトープ標識抗体による放射免疫療法の非臨床実験治療研究を行い、その治療有効性と安全性のデータを取得しヒト臨床への実用化の可能性を検証することが目的である。具体的な研究内容としては、HER2陽性の胃がん肝転移および子宮体部漿液性腺がん腹膜転移モデルマウスを作製し、そのモデルマウスにおけるアルファ線放出アイソトープアスタチン-211(At-211)標識トラスツズマブ(抗HER2抗体)の治療効果と有害事象の検証する。 研究初年度である平成29年度は、インビボイメージングに応用可能なモデルマウス作製に用いるHER2陽性胃がん細胞、および、子宮体部漿液性腺がん細胞の作製を行い、インビボイメージング可能なモデルマウス作製に向けた研究を実施した。HER2陽性ヒト胃がん細胞であるNCI-N87(N87)細胞にルシフェラーゼ遺伝子を導入、安定的にルシフェラーゼ遺伝子を発現しているN87細胞(N87-luc)を樹立、その細胞をscidマウスの脾静脈に注入することにより、肝転移マウスの作製に成功した。このマウスにおいては、肝臓における転移性胃がんの増殖をインビボイメージングで定量的に解析可能であることを確認した。 ヒト子宮体部漿液性腺がん細胞であるSPAC-1細胞においては、HER2タンパク質の発現が低いため、HER2遺伝子を発現するレトロウイルスベクターを作製し、HER2遺伝子を導入することによりHER2高発現SPAC-1細胞の樹立を実施した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現在までに、インビボイメージングに応用可能なモデルマウス作製に用いるHER2陽性胃がん細胞、および、子宮体部漿液性腺がん細胞の作製を行い、インビボイメージング可能なモデルマウス作製に向けた研究を実施した。 HER2陽性ヒト胃がん細胞であるNCI-N87(N87)細胞にルシフェラーゼ遺伝子を導入、安定的にルシフェラーゼ遺伝子を発現しているN87細胞(N87-luc)を樹立した。その細胞をscidマウスを開腹後に直接脾静脈に注入することにより、肝転移マウスの作製に成功した。このマウスにおいては、肝臓における転移性胃がんの増殖をインビボイメージングで定量的に解析可能であることを確認した。 肝転移に対する研究計画はおおむね順調に進展している。 ヒト子宮体部漿液性腺がん細胞であるSPAC-1細胞においては、ウェスタンブロットで確認したところ、予想に反してHER2タンパク質の発現がかなり低いことが明らかとなった。このため、HER2遺伝子を発現するレトロウイルスベクターを作製し、HER2遺伝子を導入することによりHER2高発現SPAC-1細胞の樹立を目指した研究を行った。レトロウイルスベクターの作製に時間がかかり、細胞樹立に関しては計画よりやや遅れている状況である。
|
今後の研究の推進方策 |
HER2陽性胃がん肝転移モデルマウスについては、モデルの作製とインビボイメージングにおけるがん増殖の定量的解析が可能となったため、今後はAt-211標識トラスツズマブのHER2陽性胃がん肝転移に対する治療効果と毒性(体重や白血球数等)を検証していく。更に、病理学的解析による治療効果メカニズムの検証を行う予定である。 HER2陽性ヒト子宮体部漿液性腺がん腹膜播種に対するAt-211標識トラスツズマブの治療効果検証と毒性検証については、早期にHER2高発現ルシフェラーゼ遺伝子陽性ヒト子宮体部漿液性腺がん細胞を樹立し、細胞株におけるAt-211標識トラスツズマブの結合性や細胞障害性を確認した上で、腹膜播種マウスモデルでの治療実験に移行する。
|