本研究課題は、高い細胞殺傷能を有する粒子放射線のアルファ線を用いたアイソトープ標識抗体による放射免疫療法の非臨床実験治療研究を行い、その治療有効性と安全性、特に転移性がんに対する治療有効性と安全性のデータを取得しヒト臨床への実用化の可能性を検証することが目的である。具体的な研究内容としてはHER2陽性の胃がん肝転移および子宮体部漿液性腺がん腹膜転移モデルマウスを作製し、そのモデルマウスにおけるアルファ線放出アイソトープアスタチン211(At-211)標識トラスツズマブ(抗HER2抗体)(以下、At-211-トラスツズマブ)の治療効果と毒性の検証を行う。 研究3年目の令和元年度(2019年度)は本課題の最終年度であることから、研究計画において未達成であった項目を中心に研究を実施した。肝転移モデルに関しては、昨年度までに治療効果および毒性に関するデータを取得済みであったが、2019年度は病理組織学的解析を中心にその治療効果のメカニズム解析を行った。病理組織学的解析では薬剤投与3時間後で治療群では未治療群と比較し腫瘍組織内の壊死領域が拡大していることが確認された。子宮体部漿液性腺がん腹膜播種モデルについては動物モデルを用いた薬剤の腹腔内投与による治療実験で良好な結果を得ている。
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