研究課題
肺腫瘍に対する体幹部定位放射線治療の治療前評価として、dual energy CTによる物質分析、およびFDG-PETによる病期診断の両方を行った肺癌症例について、悪性度の指標であるSUVmaxと腫瘍血流量および低酸素の指標であるヨード密度の背景因子と両者の相関関係を明らかにすることを目的に、本年度はデータ収集を行った。初年度の末までにdual energy CTを行った症例数は244例、FDG-PETを行った症例数は233例であり、dual energy CTとFDG-PETの両方を行った症例数は186例であった。目標の200例にわずかに届かなかったため、平成30年度の症例も加えて平成31年度に最終解析を行うこととした。ヨード密度の背景因子として有意差が見られた因子は、腫瘍サイズ、性別、組織型であり、大きい腫瘍、男性、扁平上皮癌のヨード密度は低い傾向を示した。一方、SUVmaxの背景因子として有意差が見られた因子は、腫瘍サイズ、性別、組織型、呼吸機能であり、大きい腫瘍、男性、扁平上皮癌、閉塞性肺疾患のSUVmaxは高い傾向を示した。次に、ヨード密度とSUVmaxの相関について見てみると、弱い負の相関(R=-0.273、P=0.000)が見られた。186例の中間解析では、局所制御率に関与する有意な因子は、ヨード密度と組織型、全生存率に関与する有意な因子は、SUVmaxのみであった。SUVmaxを4.0、ヨード密度を中央値で4群に分けて、局所制御率および全生存率を検討すると、SUVmax高値かつヨード密度低値の群が、有意に予後不良であった。すなわち、SUVmax高値かつヨード密度低値の群は、腫瘍血流量の相対的低下に基づく嫌気性解糖の亢進により、放射線抵抗性を獲得しているものと考えられた。
2: おおむね順調に進展している
目標症例数達成まで残り14例であり、平成30年度中に症例集積が完了する見込みである。
186例を対象とした予備的検討では、放射線治療後の局所制御率が最も悪かった群は、SUVmax高値(>4)かつヨード密度低値(中央値以下)であった。症例数を更に増やすとともに経過観察期間を延長し、SUVmaxとヨード密度を高低で組み合わせた4群について、局所制御率、全生存率をエンドポイントとして最終解析を行い、放射線感受性や予後を規定するSUVmaxとヨード密度の閾値を明らかにする。更に、予後不良群を予め特定し、そのような症例に対する線量増加試験を実施する。
購入を検討していた統計ソフトについて、残額での購入ができなかったため、あえて次年度使用額として残している。次年度、統計ソフトの購入に充てる予定である。
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