研究課題/領域番号 |
17K10466
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
青木 昌彦 弘前大学, 医学研究科, 教授 (70292141)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 放射線抵抗性 / ブドウ糖代謝 / 低酸素 / 嫌気性解糖 / Dual energy CT / FDG-PET / 肺癌 / 体幹部定位照射 |
研究実績の概要 |
肺腫瘍に対する体幹部定位放射線治療の治療前評価として、dual energy CTによる物質分析、およびFDG-PETによる病期診断の両方を行った肺癌症例について、悪性度の指標であるSUVmaxと腫瘍血流量および低酸素の指標であるヨード密度の背景因子と両者の相関関係を明らかにすることを目的に、本年度もデータ収集を行った。 本年度末までにdual energy CTを行った症例数は265例、FDG-PETを行った症例数は264例、dual energy CTとFDG-PETの両方を行った症例数は204例となり、目標の200例に到達した。 ヨード密度の背景因子として有意差を認めた因子は、腫瘍サイズ、組織型であり、大きい腫瘍と扁平上皮癌のヨード密度が低い傾向を示した。一方、SUVmaxの背景因子として有意差を認めた因子は、腫瘍サイズ、性別、組織型、呼吸機能であり、大きい腫瘍、男性、扁平上皮癌、閉塞性肺疾患のSUVmaxが高い傾向を示した。 次に、ヨード密度とSUVmaxの相関を見てみると、弱い負の相関(R=-0.285, P=0.000)を認めた。204例での中間解析では、観察期間中央値が25.1ヶ月で、2年全生存率が85.1%、2年局所制御率が91.2%であった。局所制御に関与する有意な因子は、ヨード密度、SUVmax、組織型、一方、全生存に関与する因子は、SUVmax、全身状態(PS)であった。 さらに、SUVmaxを4.0、ヨード密度を中央値で4群に分けて、局所制御率と全生存率を検討すると、SUVmax高値かつヨード密度低値の群が、いずれも有意に不良であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
目標症例数の200例に到達し、観察期間中央値は本年度が25.1ヶ月なので、平成31年度の最終解析までに、3年(36ヶ月)の観察期間中央値を達成する見込みである。
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今後の研究の推進方策 |
204例を対象とした中間解析では、放射線治療後の局所制御率および全生存率が最も悪かった群は、SUVmax高値(>4)かつヨード密度低値(中央値以下)であり、各々2年で69.5%、77.5%であった。今後、経過観察期間を更に延長し、SUVmaxとヨード密度に注目して、局所制御率、全生存率をエンドポイントとして最終解析を行い、放射線感受性や予後を規程するSUVmaxとヨード密度の閾値を明らかにする。更に、今回明らかとなった予後不良群(SUVmax高値かつヨード密度低値)に対する線量増加試験を実施し、治療成績の向上を目指したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた英語論文2本中1本の投稿が年度内に間に合わなかったため、論文投稿料が未使用となった。次年度は3本の英語論文を投稿する予定であるため、次年度使用額と合わせて有効に活用する予定である。
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