研究課題
頭頸部癌において根治的治療は手術療法であるが、発声や嚥下などの頭頸部領域の機能温存を考慮した場合、放射線治療および化学療法の役割は大きい。放射線治療においてはIMRTや重粒子線治療などの高精度化に伴い、治療成績の改善が認められる。しかし進行癌の場合ではいまだ局所再発や治療後の転移は多く、治療方針決定のためにも、治療効果や予後予測の確立が望まれる。近年、さまざまな癌腫において、腫瘍の進行や治療抵抗性のメガニズムとして免疫チェックポイント分子機構が注目されている。そこで、我々は群馬大学で放射線治療(X線治療および重粒子線治療)を施行した患者検体を用いて、免疫チェックポイント分子機構の蛋白発現と予後への影響について、トランスレーショナルリサーチを施行することとした。平成29年度では、群馬大学において2000年から2016年までに放射線治療(X線治療および重粒子線治療)を施行した頭頸部腫瘍の臨床成績を解析した。X線治療100例、重粒子線治療100例と、合わせて約200症例のデータを集積した。臨床因子(性別、年齢、病変局在、病理組織型、合併症)や治療成績(全生存率や局所制御率、無病生存率、有害事象発生割合)など算出した。治療前の生検標本をリストアップし検体を集める準備を行った。免疫チェックポイント分子機構(PD-L1, PD-1)の蛋白発現を調べるため、実際の免疫染色の条件の設定など行った。しかし、2017年研究者の施設が移動となり、同様の継続が困難となったため、上述のごとくこれまで蓄積したデータをもとに、頭頸部癌に対する放射線治療成績について研究成果の論文報告を行った。また、現在の施設(自治医科大学)でも、実行可能な研究に修正して行っている。
4: 遅れている
研究施設が変更となり、主に使用する予定であった臨床データ、臨床検体についても変更する必要性が起きたため、研究の進捗は遅れている。前施設で行った研究で得た臨床知見については、これまでに研究成果を報告してきている。また、コロナの蔓延に伴い、研究の継続は適宜中止せざるを得なかった。今後は当施設で疾患対象(食道癌)を変更して研究を継続し、当初の予定であった免疫 チェックポイント分子機構と放射線治療抵抗性のメカニズムについて検討している。
免疫チェックポイント分子機構について、食道癌の化学放射線治療を行った症例の検体を用いて、免疫染色を行う予定である。現在、当施設にて放射線治療を施行した約100症例の食道癌患者を対象として、臨床因子(性別、年齢、病変局在、病理組織型、合併症)や治療成績(全生存率や局所制御率、無病生存率、有害事象発生割合)など算出し、学会発表など行っている。今後、免疫チェックポイント分子機構(PD-L1, PD-1)の蛋白発現を調べるため、実際の免疫染色の条件の設定など行う。
研究施設が移動となり研究対象の疾患を変更せざるを得なかった。また、コロナの影響で研究の遂行を中止せざるを得ない期間があった。当該年度では新たな対象である食道癌の臨床データの集積と学会発表を行った。また、今年度はこれまでの前施設で得た知見について、論文報告を行った。次年度は、免疫染色研究を行うため実験器具や試薬など購入予定であり、学会発表の旅費代、論文報告の際の投稿代も必要である。
すべて 2020
すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 5件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (2件)
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