研究課題
高精度治療に広く適用可能な呼吸停止下照射システムの開発を目指し、以下の研究を行った。(1)汎用性の高い民生用機器を応用した呼吸波形の送信と受信関する検証(2)医療用リニアックシステムに干渉しない無線接続機構への移行に関する検討(3)被検者(患者)が自らの意志で呼吸停止するための有効な呼吸位相情報のフィードバック機構の検証(4)呼吸停止下での腫瘍位置の再現性の確認、標的体積やリスク臓器の重心位置の偏位と線量分布への影響に関する検証である。これまでに民生用CCDカメラ、ウエアラブルディスプレイにより操作室内のディスプレイ画面を受像送信できる様に設定し、呼吸情報をリアルタイム画像情報として受像できることを確認し、呼吸停止下照射システムとして設定した。本学IRBにて承認済みの「息止め法を用いたCT治療計画における腫瘍位置再現性に関する研究」に基づいて同意が得られた12例(肺癌6例/胃悪性リンパ腫(ML)6例)のデータを分析した。4D-CTに加えて患者自らディスプレイを視認しつつ呼気/吸気停止でのCTを複数回撮像した。結果として、肺癌(原発巣)、胃ML(胃全体)のCT画像間での変位量平均は概ね1mm以下と良好であり、特に安静呼気相での標的位置再現性は十分に高いと考えた。また胃ML6症例の照射日ごとの呼期停止(BH)CBCTを利用して胃の輪郭(CTV)を2名の医師が独立して抽出し、CTVのV95%を算出したところ、全102回のCBCT中95回(93%)においてV95%≧95%を満たすと確認された。外れ値の原因としては胃のガスによる拡張や腸管の移動による間接的な胃への影響が考えられ、さらなる改善を要する。本システムにより、自由呼吸下での標的位置の移動が大きい疾患領域(胸部/上腹部)でより高精度な標的形状に合わせた線量投与が可能となるものと期待される。
3: やや遅れている
呼吸停止下照射システムの基盤となる呼吸波形を送信するための画像入力や送信、受信を司る機構としてCCDカメラ、ウエアラブルディスプレイシステムの調達が概ね実施済で、上述の通り、院内IRB承認済みプロトコールによる応用を実施中である。現在まで肺癌(CTデータのみ)、胃ML(CTデータ、治療実施データ)など順次症例集積を重ねつつある。システムとしては現在有線接続で運用しており、次の課題としてより取り回しのよい無線化を目指して検討している。引き続き肺癌症例での呼吸停止下照射症例の集積に努めることになっていたが、現在当院で主として肺癌治療に用いる6MV -X線の直線加速器(リニアック)が旧来式であり、このシステムとの接続が難しいことが問題である。本来、平成29年以降で対応する施設更新(建屋改修とリニアック更新購入)を予定していたが、残念なことに施設予算の事情にて数年来更新の要望が延期されている。現有の機器では研究の実行可能性が限定的であり、今年度あるいは来年度でのリニアック更新に向けた予算化がなされた後に、次段階の研究の推進が望まれる。
胃MLに関しては照射直前に呼気停止で撮像したcone-beam CT(BH-CBCT)を用いて、胃全体(CTV)の輪郭を治療計画PTVと合わせ込むことで、呼気停止下での画像誘導放射線治療(IGRT)を実施している。上述の通り、実際のBH-CBCTから得られた輪郭情報からCTV/PTVやリスク臓器(肝、腎、腸管、心肺など)の累積線量の低減可能かを検討し、標的への照射の確実性のみならず、リスク臓器の線量低減効果を定量的な結果として得ており、今年度はこれらの論文化を図る予定である。同様に、肺癌症例での呼吸停止下照射を行いたいが、現在当院で肺癌治療に用いる6MVX線照射装置が旧来式であり、このシステムとの接続を予定されていない。本来、平成29年以降で対応する施設更新(建屋改修とリニアック更新購入)を予定していたが、残念なことに病院予算の都合で延期されている。症例集積が限定的とならざるを得ない現状では、これまでに得られたデータを活用した模擬的な治療計画を行い、本システムによる呼吸停止下での肺癌IMRTに向けた準備を可能な限り進める予定である。
現在当院で肺癌治療に用いる6MV X線照射装置が旧来式であり、このシステムとの接続を予定されていない。本来、平成29年以降で対応する施設更新(建屋改修とリニアック更新購入)を予定していたが、残念なことに病院予算の都合で延期されている。症例集積が難しい現状では、これまでに得られたデータを活用して、模擬的な治療計画を行い、本システムによる呼吸停止下での肺癌IMRTに向けた準備を可能な限り進める予定である。
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