研究課題
高精度治療に広く適用可能な呼吸停止下照射システムの開発を目指し、昨年度までに(1)汎用機器を応用した呼吸波形の送信と受信(2)医療用リニアックシステムに干渉しない無線接続機構への移行(3)被検者(患者)が自らの意志で呼吸停止するための有効な呼吸位相情報のフィードバック機構(4)呼吸停止下での腫瘍位置の再現性の確認、標的体積やリスク臓器の重心位置の偏位と線量分布への影響に関する検証を進めた。CCDカメラ、ウエアラブルディスプレイにより、呼吸情報をリアルタイム画像情報として受像する呼吸停止下照射システムとして設定した。本学IRBにて承認済みの「息止め法を用いたCT治療計画における腫瘍位置再現性に関する研究」に基づいて研究を実施した。今年度は胃悪性リンパ腫のデータを詳しく解析、品質管理的な側面について論文化を果たした。毎日の呼期停止(BH)CBCT照合画像を胃の輪郭(CTV)を2名の医師が独立して抽出し、V95%(処方線量の95%以上が投与される体積)を算出した。各CTVのV95%のmeanは97.2%と算出された。特に2症例では全ての照射セッションでこれを満たした。しかし1症例では観察者間のvariationがあり、特定のセッションで胃と近接する大腸のガスによる拡張の変化が影響したと考えられた。全102回のセッションで両観察者でV95%が95%を下回ったのは7セッションに止まり、後方視的検証からは高い照射精度が実現できたものと評価した。通常の放射線治療は自由呼吸下で行われることが多いが、呼吸停止下照射を行うことで被照射体積を小さくすることが可能となり、治療効果を確実なものにしつつ同時に正常組織への線量低減を達成できると期待されるが、臨床データの解析を進め治療成績や有害事象を今後明らかにする。また、本システムを応用した肺癌、乳癌に対する検討を加える予定である。
3: やや遅れている
呼吸停止下照射システムの基盤となる呼吸波形を送信するための画像入力や送信、受信を司る機構としてCCDカメラ、ウエアラブルディスプレイシステムの調達が概ね実施済で、上述の通り、院内IRB承認済みプロトコールによる応用を実施中である。引き続き肺癌症例での呼吸停止下照射症例の集積に努めることになっていたが、現有の機器では研究の実行可能性が限定的であり、本来、平成29年以降で対応する施設更新(建屋改修とリニアック更新購入)を予定していた。残念なことに施設予算等の事情にて延期となっていた。要望を繰り返した甲斐あって、ようやく、R3年度に建屋建設およびR4年度のリニアック更新に向けた予算化がなされたところである。新規治療機器を活用して、本システムの有効性に関する研究の推進が望まれる。
胃MLの呼気停止下での画像誘導放射線治療(IGRT)を実施している。実際のBH-CBCTから得られた輪郭情報からCTV/PTVなど技術的、品質管理的な側面は今年度論文化することができた。今後は臨床データ(治療成績と有害反応)の解析により、実質的に標的への照射の確実性とリスク臓器の線量低減効果の実証に取り組み、今年度はこれらの論文化を図る予定である。また、施設機器更新を見込んで、これまで実現困難であった肺癌や乳がんなど胸部疾患症例での呼吸停止下照射の実現に向けて、準備を進める予定である。
主要な学会活動が中止もしくはウエブ開催などに縮小された。これまでの出張旅費や参加費などの支出が減少した。当院の旧来式現有設備が本来H29年度更新の予定であったが、諸事情で延期となってしまった。R3年度に建屋、R4年度に機器更新に向けてようやく入札作業に入った。旧来式の設備において研究実施が限定的となってしまった。次年度は、施設更新後に速やかに呼吸停止下照射システムの運用と研究遂行が可能となるよう準備を進める。
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