研究課題
高精度治療に広く適用可能な呼吸停止下照射システムの開発を目指し、以下の研究を行った。これまでに(1)呼吸波形情報をリアルタイム画像として操作室側から送信し、また患者側のウエアラブルディスプレイで受信するためシステムを確立した。(2)初期システムが有線接続であったため実臨床におけるガントリや寝台角度の制限や干渉の可能性があり無線接続機構への移行に関する検討を行った。(3)呼吸停止下での腫瘍位置の再現性の確認、標的体積やリスク臓器の重心位置の偏位と線量分布への影響に関する検証を行い、CCDカメラ/ウエアラブルディスプレイを活用した、呼吸停止下照射システムを確立した。(4)本学IRBにて承認済みの「息止め法を用いたCT治療計画における腫瘍位置再現性に関する研究」に基づいて研究を実施した。特に、胃原発の悪性リンパ腫に対する放射線照射時の被照射体積を低減し、かつ標的に対し線量集中性の高いノンコプラナー3D-CRT/IGRTを実施した。(2021年2月、論文発表済み)本年度は、左乳癌に対する深吸気息止め下照射(DIBH)の実施に向けた基礎的検討を行い、(1)呼吸位相のリアルタイムモニタリングとしてRGSC(Reapiratory Gating for Scanners)が認識するブロックマーカーを右乳頭尾側に設置すること、(2)IRマーカーを左胸壁に5箇所(その内、接線方向の皮膚面上の乳頭及び長軸方向の乳房上縁、下縁の3箇所にはACCULOCゴールドマーカーを組み合わせる)等の工夫により、DIBH時(セットアップ時/照射中)のEPID/Cine modeにより照射位置精度の確認が可能となる施設内プロトコールを確立し、臨床応用を開始した。
4: 遅れている
本来は、本研究の開始に間に合うよう、平成29年の施設更新(建屋改修およびリニアック更新)を予定していたが、財政悪化の事情により延期となった。民生用CCDカメラやウエアラブルディスプレイを活用した呼吸停止/同期のためのシステム自体は完成し、基礎的検討や胃悪性リンパ腫に対する呼吸停止下のノンコプラナー3DCRTの治療実施を進めてきたが、旧来のリニアックではX線のエネルギーや照射品質における制限から、肺癌に対する呼吸同期/停止下での定位照射やIGRT/IMRTの実施に至らず、研究推進に支障をきたしていた。
この度、令和4年5月に待望のリニアック更新がなされたので、残りの期間で速やかに呼吸同期システムのアップデートを図り、現在実施中の(1)左乳癌に対するDIBH照射の手法のアップグレード、症例集積による照射精度や心臓線量低下の実証、(2)肺癌など胸部疾患に対する呼吸同期/停止下での定位照射やIMRTの実施など、次段階の研究の推進に繋げたい。
コロナ禍において主要な学会活動が中止もしくはWEB開催などに変更や縮小がなされた。計画当初の予定とは出張旅費や参加費、海外渡航費など支出が大きく減少した。本研究に合わせて平成29年にも行われる筈であったリニアック更新の遅延により、研究遂行が限定的となっていた。この度、令和4年5月より新規リニアックの更新、稼働予定となった。今後は、速やかに呼吸停止システムの運用やアップデートを迅速に進め、研究遂行につなげる。
すべて 2022 2021
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)
In Vivo
巻: 36 ページ: 1485~1490
10.21873/invivo.12855
Journal of Surgical Oncology
巻: - ページ: -
10.1002/jso.26854
Reports of Practical Oncology and Radiotherapy
巻: 26 ページ: 906~914
10.5603/RPOR.a2021.0107
Molecular and Clinical Oncology
巻: 14 ページ: -
10.3892/mco.2021.2215