研究課題/領域番号 |
17K10484
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
大屋 夏生 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 教授 (70281095)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 放射線治療計画 / 体格 / PTV |
研究実績の概要 |
体格調整放射線治療計画(PhART)の確立に向けて、いわゆる「体格」という漠然とした概念を、どのように数値化するかを決定する必要がある。人体の「体格」に関連する幾何学的情報としては、「身長」と「体重」のみが日常診療上入手可能である。これらの2つの値のみから算出可能で、かつ臓器の大きさと最もよく相関する「体格指数」の算出式を決定するために、肝に基礎疾患のない約50人の上腹部CT画像を無作為に抽出した。そのうち25人分において画像解析が完了しており、肝体積と体格のデータセットが得られている。脳および肺についても、30症例程度の症例抽出が行われており、そのうち約半数が解析終了している。 現時点では、定量的解析が一部の症例でのみ終了している段階であり、「体格指数」の算出式における「身長」の係数は、かなり1に近い値になるものと推測されている。言い換えれば、「体重の立方根」の係数はかなり0に近い値と考えられる。「体重」は体脂肪や筋肉の量に依存して大きく変動することは想像に難くないため、この結果は合理的と思われるが、さらに症例解析が進むことで変化することもありうる。また、母集団全体において普遍的な係数を定めるためには、極端な体格の症例の割合を増やした解析が必要なことが推定される。このような症例は比較的稀少であるが、各臓器において数十例を抽出し解析する方向で進めていく予定である。特に、小柄な体格の症例において、PTVが過大評価される危険性に着目する、本研究の本質を意識して症例蓄積を進めていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現時点での無作為に抽出した症例における解析結果では、想定よりもばらつきが少ない印象であり、無作為のシリーズのみでは体格指数Pの決定は困難な可能性があるので、症例の抽出方法を再検討せざるをえない。また、臓器に基礎疾患がないという条件を、個別の症例で確認することにかなりの時間を要している。
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今後の研究の推進方策 |
より正確かつ合理的に算出式を決定する目的で、比較的極端な体格の症例を各臓器において、さらに約20人分抽出することを検討している。主としてこれらの症例を治療計画における腫瘍モデルに用いることで、円滑に次年度以降のPhART導入によるPTV 体積およびDVHへの影響の検討に結びつける。
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次年度使用額が生じた理由 |
無作為に抽出した症例だけでの予備的解析結果では、小柄な体格の症例におけるPTVの過大評価を検討するのに十分な基礎データの蓄積が困難な可能性が示唆され、症例抽出の方法を再検討する必要が生じ、この検討に予想外の日数を要したため、年度内完了が困難となった。
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