研究課題
ラット扁平上皮癌細胞SCC-158を、スフェロイド作製用超低着表面96wellプレート(Corning, 7007)に播種し、それぞれ直径150、300、450μmのスフェロイドを作製し、照射回数は500mGy/日で10、20および30日間(5Gy、10Gy、15Gy) 連続してX線照射を行った。長期間放射線に暴露されて生き残った細胞は癌の浸潤能や転移能があがるのかどうかを検討するために、細胞増殖や移動を促進し、癌の進行・転移を誘導するS100A4に着目し、上記の回収した細胞とX線未照射群の細胞について、p53およびS100A4のmRNA発現、タンパクレベルではp53およびS100A4の発現とp53のリン酸化について検討した結果、10、20および30日間照射群において、p53およびS100A4の発現は未照射群と比較して、10日で最も高く、20日、30日になるにつれて減少していた。P53のリン酸化についても同様の結果であった。P53は細胞周期、アポトーシスなどを始め、様々なシグナル伝達関与しており、10日では放射線障害に対するシグナル伝達が働いているが、20日、30日になるつれ放射線障害に対して適応してくることにより放射線抵抗性を獲得している可能性が示唆された。長期間照射されたスフェロイドの電子顕微鏡では、スフェロイドの内部細胞に明らかな形態変化がみられた。APE1の高発現が放射線抵抗性に関与しているとの報告があり、ウェスタンブロットにて検討したところ、この実験系ではスファロイドの大きさ、照射日数を変えてもコントロール群との間に有意差はみられなかった。放射線抵抗性の獲得ついてはまだ検討する余地が残っているが、照射していく過程において抵抗性を獲得し、様々なシグナル伝達を経て癌の浸潤や転移能を獲得していくことが示唆された。
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