研究実績の概要 |
体幹部の強度変調放射線治療(Intensity-modulated radiation therapy, IMRT)において、呼吸性移動が及ぼす吸収線量への影響について、ファントムや呼吸同期プラットフォームを用いて検証を行った。 まず初めに、ファントム内に標的となる直径3 cmの球形の擬似腫瘍を設置し、このファントムを呼吸同期プラットフォームに固定した。そして、1分間に10回の実際の呼吸に模した動きでファントムを移動させ、移動の振幅を0.8 cm、1.0 cm、1.2 cm、1.4 cm、1.6 cm、2.0 cmに順次延長しながら、各振幅において4DCTを撮影した。これらの振幅の異なる標的に対して、それぞれ0度~180度までの時計回りと反時計回りの半周2回照射で強度変調をかけた治療計画を行った。次に、標的の中心に線量計を設置し、各振幅で標的を移動させながら照射を行ったところ、振幅が1.6 cmまでは予測値と実測値の差は2%以内だったが、2.0 cmで4%以上に増加した。続いて、標的の中心にフィルムを設置し、同様の照射条件で測定を行ったところ、gamma indexが3 mm/3%でのパス率は、振幅が1.2 cmまでは90%を上回ったが、これを超えるといずれも90%未満であった。 以上の結果より、IMRTの治療中、呼吸により標的が移動したとしても、その移動距離が限られていれば(今回の実験では1.2 cmまで)、許容範囲内の誤差で照射されることが示された。その一方で、移動距離が長くなりすぎると、それに応じた治療計画を行っても、必要とされる照射領域全体において正確な線量分布が得られない可能性があることが示唆された。
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