研究実績の概要 |
放射線により、HMGB1, anti-CD47 siRNA, anti-PD-1を放出するParticleを、ヒアルロン酸-プロタミンの静電気的結合を利用して作成、Coatsome-EL-010中に封入してその放出量を計測、さらにパーティクルを尾静脈より注射した後の体内動態を計測し、静脈注射によるParticleの標的の可能性を検討した。 ヒアルロン酸はプロタミンとHMGB1, anti-CD47 siRNA, anti-PD-1溶液中で、静電気的に結合し、Particleを生成した。本パーティクルをCoatsome-EL-010中に封入して最終的なパーティクルを作成した。その径は742 ± 13 nmであった。 上記パーティクルに放射線を照射したところ、放射線により、HMGB1, anti-CD47 siRNA, anti-PD-1が、それぞれ、65%、72%、77%放出されることが、PIXE法、およびmicro PIXE camera法により確認された。 本パーティクルを、左下腿に乳がん腫瘍 MM48腫瘍を移植したマウスに尾静脈から注入し、9時間後に、脳、肺、腎、肝、脾、腫瘍に捕捉されたパーテイクルをmicro PIXE法により観察した。結果、パーティクルは、脳、肺、腎、肝、脾、腫瘍よりも有意に腫瘍に優先的に捕捉され、分配されたパーティクルに放射線を照射したところ、HMGB1, anti-CD47 siRNA, anti-PD-1が放出されることが確認された。 これにより、放射線による、HMGB1, anti-CD47 siRNA, anti-PD-1の標的化が可能と思われ、放射線と免疫療法との相乗効果による腫瘍の局所コントロール促進、abscopal effectによる放射線の局所療法から全身療法への拡大、パーティクルによる免疫療法剤限局化作用による、免疫療法剤副作用軽減が予測された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヒアルロン酸-プロタミンをHMGB1, anti-CD47 siRNA, anti-PD-1溶液中で、静電気的に結合させ、Coatsome-EL-010に封入すると、放射線照射に反応して、これらの薬剤を放出するパーティクルが作成可能であることが明らかとなった。 また、本パーティクルを、左下腿に乳がん腫瘍 MM48腫瘍を移植したマウスに尾静脈から注入したところ、腫瘍表面に優先的に分配され、さらに分配されたパーティクルに放射線を照射すると、放射線に反応して、HMGB1, anti-CD47 siRNA, anti-PD-1を放出させることに成功した。これは、標的化されたAbscopal effectを実現するための重要な第一歩となるものであり、当初計画されていた、放射線に反応して、HMGB1, anti-CD47 siRNA, anti-PD-1を放出する、Nanoparticleを使用した、標的化された免疫療法と、Abscpal effectの実現にちかづいたものと自己評価するものである。
|
今後の研究の推進方策 |
放射線に反応して、HMGB1, anti-CD47 siRNA, anti-PD-1を放出するParticleが、免疫療法にどの様に影響するかを検討する。 腫瘍検出用ナノパーティクルの尾静脈注射後の体内動態と腫瘍検出能力を研究した後、腫瘍検出用ナノパーティクルから、第一回目の放射線により放出された anti-CD47 siRNAとanti-PD-1抗体が腫瘍のCD-47シグナル(don't eat me signal)、およびPD-1抗原をを阻害するか否かを、免疫染色、たんぱく分析により観察する。 腫瘍治療用パーティクルからのHMGB1放出を確認し、Dendritic cell (DC)のCross Primingに対する影響を観察する。
|