研究課題
重粒子線(炭素線)は良好な物理学的線量分布に加え、生物学的効果比がX線に対して2.5~3.0と高く、特に放射線抵抗性腫瘍に対して有効である。本研究では死亡率第一位で治療成績が不良な肺癌において、治療成績向上を目的とした局所進行非小細胞肺癌に対する炭素線治療の有効性を確立するための基礎的研究を行っている。ヒト非小細胞肺癌細胞を用いて炭素線照射と抗がん剤併用による細胞致死効果の増感性について検討した。炭素線照射が群馬大学重粒子線医学研究センターの炭素線治療装置を用いて、290MeV/μでSOBPビームを作成し照射実験を実施した。SOBPビーム中心のLETは50 keV/μmである。照射時に添加する抗がん剤は非小細胞癌の化学療法で汎用されているカルボプラチンとパクリタキセル、を用いた。ヒト肺癌細胞A549(EGFR wild type)ならびにHCC827(EGFR mutant type)ともに炭素線照射の細胞致死効果は同等であった。A549ならびにHCC827はカルボプラチン、パクリタキセル、エトポシドのいずれの併用においても、炭素線照射単独に対して相乗効果を示すことが明らかとなった。この現象はX線照射の場合と同様に認められた。増感効果はそれぞれRBE (Relative Biological Effectiveness)が1.2~1.4程度で同等であった。胞死のメカニズム解析においては照射後数時間のアポトーシスと照射3日後のセネッセンスがX線照射時に比べ増加していた。アポトーシスならびにセネッセンスのいずれにおいても炭素線照射と抗がん剤併用で有意な増強が認められた。EGFRステータスの相違による影響は明らかにできなかった。今後の化学重粒子線治療を局所進行肺癌に適応するうえで重要なデータが得られた。治療レジメンの開発に結びつく研究成果である。
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