前年度までに膵がん細胞株のBxPC-3を左下肢に移植した膵がんモデルマウスを作成し、放射線増感効果もある抗がん剤のgemcitabineとX線による外照射治療を行い、gemcitabineまたはX線単独治療よりもgemcitabineとX線の併用療法の治療効果が得られることを確認した。抗CD147抗体で皮下腫瘍を免疫染色し、発現が確認できたのでRIT実験の標的分子として選択した。また、標的分子の抗CD147抗体をIn-111で標識し、BxPC-3への細胞結合実験を行い、結合が高いことを確認した。また膵がんモデルマウスで、抗がん剤投与により、抗体(RI)の腫瘍集積を含めた体内動態の変化を検証した。血液、肺、肝臓、脾臓、膵臓、小腸、腎臓、筋肉、骨、腫瘍を採取し、腫瘍へのRIの集積が、他の臓器よりも高いことを確認した。また、このデータを元に、治療核種として想定しているβ線放出核種のY-90で標識した場合の腫瘍及び正常組織への被ばく線量を推定した。 今年度は治療核種のY-90で標的分子の抗CD147抗体を標識し、0、0.925、1.85、3.7MBqを膵がんモデルマウスに投与し、腫瘍サイズと体重を測定して、治療効果を検証した。最も治療効果の得られた3.7MBqを選択し、外照射治療実験と同様に、抗がん剤のgemcitabineまたはRITの単独治療と、gemcitabineとRITの併用療法を行い、治療効果を検証した。治療による体重の変動は見られず、単独治療に比べgemcitabineとRITの併用療法の治療効果が高いことを確認した。また投与1、3、7日後の腫瘍をサンプリングし、HE染色とKi-67による免疫染色を行った。
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