いわゆるAngiosarcomaには、血管由来とされる血管肉腫とリンパ管由来とされるリンパ管肉腫が含まれたもので、従来は血管肉腫とリンパ管肉腫の正確な鑑別が困難だったため、放射線療法についても両腫瘍を区別せず実施されている。そこで、増澤らが樹立したヒト血管肉腫細胞株ISO-HAS-B細胞株、ヒトリンパ管肉腫細胞株Mo-LAS-B細胞株を用いて、異なる由来の血管肉腫細胞株の放射線感受性を検討した。細胞の放射線感受性を検討する際、コロニー形成法による測定が一般的だが、両細胞ともコロニーを形成しなかったため、コロニー形成法に代わるアッセイとしてHigh-density survival assay にて検討した。その結果、D10は共に6Gy未満であり、一般的に放射線抵抗性と言われている細胞株よりは放射線感受性であったが、マウス血管肉腫細胞株ISOS-1細胞よりは、両ヒト細胞株は放射線抵抗性だった。一方、ISO-HAS-B細胞とMo-LAS-B細胞の比較では、D10に有意な差が認められず、ISO-HAS-B細胞とMo-LAS-B細胞は同等の放射線感受性を有していると考えられた。次に、ISO-HAS-B細胞とMo-LAS-B細胞の放射線照射後の転移能の検討を行った。方法は放射線源として炭素線を用いて、マトリジェルを使った浸潤アッセイで評価した。その結果、低い線量域でMo-LAS-B細胞の方がISO-HAS-B細胞よりも浸潤能が低下したものの、線量が高くなるにつれ両細胞とも同等レベルの浸潤能の低下となった。一方、両細胞とも炭素線照射による明らかな浸潤能の亢進は認められなかった。すなわち、血管肉腫は、血管由来やリンパ管由来に関わらず高い放射線感受性を有していた。炭素線照射は、両由来細胞とも浸潤能の抑制が認められ、特にリンパ管肉腫は低い線量でも効果が発揮されたものの、高い線量では両由来とも同等に血管肉腫の浸潤抑制に効果があることが示唆された。
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