研究課題/領域番号 |
17K10500
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
深井 原 北海道大学, 医学研究院, 特任講師 (60374344)
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研究分担者 |
嶋村 剛 北海道大学, 大学病院, 准教授 (00333617)
川村 典生 北海道大学, 医学研究院, 特任助教 (20746953)
島田 慎吾 北海道大学, 大学病院, 医員 (40755576)
木村 太一 北海道大学, 医学研究院, 客員研究員 (90435959)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 移植・再生医療 / コンディショニング / 発現制御 / 臓器灌流 |
研究実績の概要 |
心停止ドナー腎の修復法を開発し、移植成績の向上、ドナー不足解消を目指して、1) 臓器灌流法の開発、2) 臓器の防御能を向上させるコンディショニング法の開発、を行うものである。前年度までに、ヒト尿細管上皮細胞株(HK2)を用いて、低温酸素化状態において14-3-3ζの機能増強がエネルギー産生を増強させること、また、14-3-3ζ発現増強剤とNrf2発現促進剤により3時間以内に14-3-3ζ発現誘導、Nrf2活性化誘導が可能なことを明らかにした。 今年度は、定常状態、冷保存後のストレス下における細胞機能に対する14-3-3ζ、Nrf2の影響を明らかにするために、これらのコンディショニング細胞を冷保存あるいは復温・再酸素化し、24時間まで継時的に採取した。これらの試料をProteomics解析 (LC-MS/MS法)、ウェスタンブロット法で評価し、14-3-3結合配列を有する多くのタンパク質のリン酸化が維持されることを確認した。 ラットに14-3-3ζ発現誘導を投与し、14-3-3の発現誘導の至適条件を検討した。薬剤の難溶性ゆえに種々の脂溶性溶媒で溶解し静脈投与を試みたが、副作用が強く断念した。腹腔内投与では、薬剤の析出により効果が不安定であったが、発現を誘導できる可能性が示唆された。今後、リポゾーム包埋やシクロデキストリン包接などを検討する必要があると考えられた。 ラット腎臓の単離灌流や体内でのカニュレーションと臓器灌流モデルを確立し、いわゆる、無虚血移植モデルのための臓器灌流法に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
薬剤の溶解、drug delivery に難渋し、臓器レベルの検討がやや遅れている。一方で、解析手法や灌流モデルの構築は予定以上に進んでおり、プロテオミクス解析 (LC-MS/MS法)や、無虚血移植モデルなど、今後の展開に必要なすべての準備が整った。全体としては、おおむね順調と評価し得る。
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今後の研究の推進方策 |
臓器レベルでの検討: 非心停止腎の冷保存(対照)、心停止腎の冷保存、同・冷保存-機械灌流、を検討する。4℃、25℃の機械灌流の効果を比較する。また、見出された至適条件に対して、14-3-3ζ発現誘導、Nrf2活性化誘導を施し、虚血再灌流障害の軽減効果を評価するとともに、プロテオミクス解析 (LC-MS/MS法)により、そのメカニズムを明らかにする。灌流液の組成や温度(低温)によっては、14-3-3の発現増強が起こらないことも懸念される。既知の作用以外にも、種々の転写因子に対する作用やオートファジーへの影響等、予備実験で興味深い新知見を得ている。14-3-3ζの発現を阻害するmiR451 の阻害剤も14-3-3ζ発現増強法の一つである。コストが高いので治療にはなり難いが、メカニズム探索には有用であろう。CRISPR/Cas9 による14-3-3ζのKO 細胞も作成済みである。大動物腎移植モデルの経験もある。種々の生体機能との関わりを探索するヒントや、臨床応用に向けた準備等を多方面から進めている。
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次年度使用額が生じた理由 |
動物実験の検体を薄切、免疫染色するための経費が執行されていないために残金を生じた。動物実験における至適条件の検討中に、当初の予定よりも治療の有効性を高める方法が見出されたため、試料収集が繰り延べられたものであり、次年度には執行する予定である。従前より実施予定、執行予定の研究は、前期の繰り越した研究と共に、そのまま変更なく実施する予定である。
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