研究課題/領域番号 |
17K10501
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
渡辺 正明 北海道大学, 大学病院, 医員 (40789848)
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研究分担者 |
山下 健一郎 北海道大学, 医学研究院, 特任教授 (00399940) [辞退]
後藤 了一 北海道大学, 大学病院, 助教 (10645287)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 膵島移植 / 免疫寛容 |
研究実績の概要 |
膵島移植は、膵臓移植と比較して圧倒的に低侵襲な1型糖尿病根治的治療法である。膵臓移植と遜色のない移植成績が得られつつあるものの、現状の免疫抑制法では、アロ膵島の長期生着は得られていない。膵島の単離精製過程での膵島障害、移植手技に伴う強い炎症反応が移植後早期に膵島障害を惹起し、これにより増強された獲得免疫応答が膵島グラフトを拒絶する。膵島障害の軽減法、膵島グラフト障害の機序は未だ十分には開発・解明さておらず、移植膵島の長期生着をもたらす新たな治療法の確立にはその解明が不可欠である。本研究では膵島移植における、膵島グラフト障害の機序を明らかにするとともに、膵島移植の長期成績の劇的な向上をめざす新たな治療法として、ドナー抗原特異的な免疫抑制性細胞の治療効果を検討し、臨床応用へ繋げる基礎研究である。 平成29年度は、マウス膵島、マウス膵島移植モデルを用いて、自然免疫応答抑制法と免疫抑制性アナージー細胞輸注療法の併用が膵島移植の有効な治療法になり得るかを検証するため、ドナー抗原特異的な免疫抑制性アナージー細胞を誘導する上で、培養期間、細胞濃度、抗体濃度を比較検証し、最も免疫抑制性の高いアナージー細胞の誘導法を見出すことに主眼をおいてきた。本年度は、まず、技術的に難しい、マウス膵島の単離や移植技術の安定をはかるとともに、マウスマクロファージの単離の技術を確立することができた。マウスでのCD80/86抗体の確立にやや時間を要したが、ようやく使用可能な状況となり、目下、最も効果的な免疫抑制性の細胞を誘導する培養期間、細胞濃度、抗体濃度を比較検証を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
技術的に難しい、マウス膵島の単離や移植技術の安定をはかるとともに、マウスマクロファージの単離の技術を確立することができている。マウスでのCD80/86抗体の確立にやや時間を要したが、ようやく使用可能な状況となり、目下、最も効果的な免疫抑制性の細胞を誘導する培養期間、細胞濃度、抗体濃度を比較検証を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、最も有用な方法で誘導されたドナー抗原特異的な免疫抑制性アナージー細胞をex-vivoで誘導し、誘導された細胞をマウスアロ膵島移植モデルでのレシピエントに膵島移植後に輸注し、膵島グラフトの生着期間延長効果を検証する。ストレプトゾトシンで糖尿病誘導したB6マウスに、BALB/cマウス膵島を肝臓内に経門脈的に移植し、生食のみ投与のコントロール群、輸注細胞投与群で、膵島グラフトの生着期間を血糖で検討する。移植後7日目、4日目の膵島グラフト機能を静脈内グルコース投与試験で検討し、免疫学的検討として、移植後のレシピエントの脾臓細胞を用いてMLR、IFN-γ ELISPOT assay、移植後14日目に移植後の肝臓内の移植膵島を免疫組織学的に検討し、細胞浸潤の有無を検討する。(いずれも応募者の以前の研究方法を参照。Watanabe M Transplantation 2013)さらに、これまで応募者が示してきた、移植直後の自然免疫応答を制御する、NFKB抑制、IRR刺激といった方法と細胞輸注療法を併用することで、少ない膵島数(200個のBALB/cマウス膵島)でも生着期間の延長効果が得られるかを同様の方法で検証する予定である。なお、これらの結果をもとに前臨床試験としての霊長類膵島移植実施に向けた具体的なプロトコルを作成する。
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次年度使用額が生じた理由 |
H29年度交付額1,600,000円に対し、執行額 985,403円、繰越額614,597円である。研究計画においては、最も免疫抑制性効果の強いアナージー細胞の誘導法を見出すことを念頭に実験を進めた。上記報告にあるように、誘導される細胞の特性に深くかかわる細胞誘導における細胞数とドナー抗原細胞数の比率、使用する抗体、培養期間を中心に検討してきた。当初の予定よりも検討に使用するCD80/86抗体の準備に時間を要したため、執行額が当初の予定よりも少なくなっている。今後は、誘導されたアナージー細胞を膵島、マクロファージ(RAW 264.7 cell)や、肝臓から単離したKupffer細胞とin vitroで共培養し、膵島数の変化、膵島障害の指標となるHMGB1、マクロファージ・Kupffer細胞の活性の変化(IL-6, IL-12, TNF-α産生)をFACS、ELISA、PCRで検証し、アナージー細胞の膵島、炎症担当細胞への影響、効果を検討する予定である。さらにその後には、誘導されたアナージー細胞を同種同系マウス膵島移植モデルのレシピエントに輸注し、早期グラフト障害に対するアナージー細胞の輸注療法の効果を検討する予定である。
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