研究実績の概要 |
膵島移植は、膵臓移植と遜色のない移植成績が得られつつあるものの、現状の免疫抑制法では、長期生着は得られていない。本研究では膵島移植、細胞移植における、移植された細胞の長期成績の劇的な向上をめざす新たな治療法として、ドナー抗原特異的な免疫抑制性細胞の治療効果を検討し、臨床応用へ繋げる基礎研究である。 我々は、肝移植臨床試験で用いた方法(Hepatology 2016, Bashuda H, JCI 2005) に準じ、ドナー抗原特異的な免疫抑制性アナージー細胞を誘導した。今後の臨床応用を目指し、CTLA4-Ig細胞数とドナー抗原細胞数の比率、使用する抗体、培養期間を検討し、ヒト末梢血リンパ球(PBMC)5.0x106細胞を2.0x106ドナー抗原と40 μg/106 cells濃度のCTLA4-Igを14日間の共培養条件とし、ドナー抗原特異的な免疫抑制性アナージー細胞が誘導されることを報告した。(Cell Transplantation. 2018 Nov; 27(11): 1692-1704)引き続き、マウス細胞における、免疫抑制性細胞の誘導を行うため、マウス脾臓細胞、抗CD80抗体、抗CD86抗体を用いて誘導を試みた。細胞培養条件、細胞数により安定した誘導法を確立するのに時間を要したが、適切な誘導条件を見出した。現在、誘導された細胞をマウス膵島、マウス肝細胞、Kupffer細胞と共培養し、その効果を検証している。これらに並行して、マウスモデルにて、膵島移植、細胞移植での効果を検証するため、マウス膵島移植モデル、マウス肝細胞移植を確立した。マウス肝臓からの肝細胞の誘導および、移植モデルを確立し、その効果を学会にて報告し、現在論文投稿中である。誘導された免疫抑制性細胞をマウス移植モデルでのレシピエントに輸注し、移植直後のNF-κB抑制、IRR刺激と併用する検証を行っている。
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