研究課題
平成30年度までの研究で、皮下移植に新規リコンビナントペプチド(RCP)を導入することで、400 IEQsという非常に少ないグラフト量でも糖尿病マウスが90%治癒することを明らかにした。そこで令和元年度はRCPに血管新生作用をもつ脂肪組織由来幹細胞(Adipose tissue derived stromal cells: ADSCs)を組合せることで、皮下膵島移植の生着を促進するかを検証した。レシピエントC57BL/6マウス皮下にADSCを付加したRCPを10日間または28日間留置した群(RCP+ADSC d10群、RCP+ADSC 4w群)、RCP単独で4週間または10日間留置した群(RCP d10群、RCP 4w群)、経門脈移植群の5群を設定し、経門脈移植のマージナル量である300 IEQsの膵島を移植した。移植後の血糖推移、糖負荷試験、膵島内部と膵島周囲の間質部の免疫染色にて評価した。その結果、移植後30日までの血糖推移と治癒率は、RCP+ADSC 4w群とRCP 4w群が経門脈群よりも有意に高かった(p<0.01)。また、糖負荷試験においてRCP+ADSC 4w群がRCP 4w群よりも有意に良好な耐糖能を示した。免疫組織学的検証における膵島周囲の間質のフィブロネクチン陽性率は、ADSC付加群がRCP単独群よりも有意に高値を示し(p<0.01)、膵島被膜のコラーゲンⅢ陽性率はRCP+ADCS 4w群がRCP+ADCS d10群よりも有意に高値を示した(p<0.01)。以上の結果から、RCPデバイスを導入した皮下膵島移植は、マウスモデルにおいては経門脈移植よりも良好な移植効果を発揮し、さらにADSCを付加することでより効果的に移植膵島の血管新生構築や細胞外マトリックスの補填を促進し、膵島グラフトの生着を促進させる可能性が示唆された。
すべて 2019
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (1件)
Scientific Reports
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PLoS One
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