研究実績の概要 |
我々はこれまでラット門脈血流遮断下において出現する肝幹細胞である肝上皮性細胞(liver epitherial cell: LEC)を見出し、分離・継続培養してきた。本細胞は分離時AFP陽性・Albumin陰性であるが、肝内移植後Albumin陽性細胞へと変化するため、大量肝切除後の肝不全予防としての肝幹細胞移植のモデルになると考えた。一方、幹細胞移植の問題点として腫瘍化が挙げられるが、間葉系培養細胞から腫瘍化を来さない新たな体性幹細胞(Muse細胞)が発見され、神経・肝細胞・脂肪細胞・骨細胞などへ変化することが認められている。このMuse細胞との同一性を比較するため、今回Muse細胞で発現している遺伝子の有無をLECで検討した。結果、間葉系マーカーであるCD29, CD105, CD90はいずれも発現しておらず、多能性マーカーであるNanog, Oct3/4, Sox2の発現も認めなかった。また、CD34, NG2, Eps, CD31, CD117, CD146, CD271, Tyrp1, Dctなどの各種マーカーも検索したが、いずれの発現も認めなかった。以上から、LECは幹細胞からすでに肝胆道系細胞へ分化が進んだ細胞であることが判った。
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