研究課題/領域番号 |
17K10506
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研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
吉岡 政人 秋田大学, 医学部附属病院, 講師 (40375275)
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研究分担者 |
山本 雄造 秋田大学, 医学系研究科, 教授 (70281730)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | LEC / Muse細胞 / 幹細胞 / 肝細胞移植 / 肝切除 / 低酸素耐性 |
研究実績の概要 |
LEC細胞はラットの門脈塞栓葉から得られた上皮細胞であり、培養中に肝細胞と胆管上皮細胞の両方に分化可能な細胞である。肝細胞移植時の低酸素状態に耐えうる細胞の候補になりうるかを検討するため、LEC細胞における低酸素耐性能と、それにに関与する遺伝子および蛋白の解析を行った。培養しているLEC細胞を、酸素濃度2%まで低下させたインキュベーターで培養し、その生存能を検討した。低酸素12時間の時点で通常の肝細胞はトリパンブルー法で10%程度まで減少したが、LEC細胞はほぼ100%生存できることが確認できた。また、細胞数においても低酸素12時間の時点でLECは増加することが可能であった。細胞数増加に関与する因子を検討するため、cyclin D1, D2のmRNAを検討したが、LECの株によって、反応がバラバラであり、一定した低酸素耐性を示せなかった。次にcyclin Aの蛋白発現をwestern blottingで検討したが、LECにおいてcyclin Aの発現を描出できなかった。次に、他の増殖関連因子を検索することとし、血管内皮増殖因子の発現を検討した。LECでVEGF-A、VEGFR-2の発現を確認できたため、低酸素6時間におけるmRNA発現量の変化を検討した。その結果、VEGF-A、VEGFR-2共に、低酸素6時間後でも発現量は減少することがなかった。これを踏まえ、VEGFの転写を促進する低酸素誘導因子:HIF-1αの発現変化を検討した結果、低酸素でもHIF-1αの活性は保持されていた。さらにHIF-1αの活性化によって誘導されるケモカインSDF-1αも、低酸素で発現は低下しなかった。これらの結果から、HIF-1α, SDF-1αを介することによってLECの低酸素耐性が獲得できていることが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度はLEC細胞とMuse細胞の比較検討を行い、Muse細胞で発現している因子がLECでは発現しておらず、全く異なるものであることが判った。平成30年度はLEC細胞の低酸素耐性能を検討すべく、低酸素耐性関連遺因子や増殖因子の発現を検討した。
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今後の研究の推進方策 |
令和1年度は、臨床で問題となっている肝細胞癌における低酸素耐性に関与している因子を培養細胞で検討し、動脈塞栓術に耐えうる肝癌細胞の特徴を解明したいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
培養細胞におけるマイクロアレイ研究を予定している。マイクロアレイの検査時期がずれ込んだため、マイクロアレイ研究に使用予定の経費が2019年度に移行となった。
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