研究課題/領域番号 |
17K10507
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
飯室 勇二 山梨大学, 大学院総合研究部, 医学研究員 (30252018)
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研究分担者 |
河野 寛 山梨大学, 大学院総合研究部, 准教授 (40322127)
鈴村 和大 兵庫医科大学, 医学部, 講師 (50434949)
藤元 治朗 兵庫医科大学, 医学部, 教授 (90199373) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 門脈圧亢進症 / 脾腫 / 脾線維化 / 肝線維化 / 脾摘 / 酸化ストレス |
研究実績の概要 |
1.肝線維化に伴い腫大した脾臓における線維化の検討(継続) 昨年度に引き続き、門亢症患者(軽度から高度までの40症例)から摘出した脾臓組織の系統的な組織学的検討を行った。門亢症の脾臓では門脈圧の亢進に伴う赤脾髄の脾洞の増生・拡張、および脾洞内皮に挟まれた赤脾髄間質(脾索)の狭小化が観察され、門亢症が高度になるにしたがって、赤脾髄脾索内における線維化が増強していた。線維性コラーゲンの産生にかかわると考えられるalpha-SMA陽性細胞が同部位に多数認められ、赤脾髄の細網細胞マーカーを用いて、2重免染を行った結果、細網細胞の筋線維芽細胞への形態変化が脾臓線維化の病態であることが示唆された。また、線維化の原因として、酸化ストレスの関与を検討したところ、赤脾髄における各種酸化ストレスマーカーの増強とNADPHoxidase(NOX)の強発現が観察された。このことから、門亢症の脾腫に伴う線維化に酸化ストレスが関与していることが強く示唆された。
2.ヒト硬変肝における脾摘後の形態変化の観察(継続) 脾摘を先行させた肝切除症例(肝癌患者)の非癌部組織を用いて、免疫組織学的検討を行った。脾摘後に多数の類円形で粗大な単球/マクロファージ(CD68陽性)が線維性瘢痕組織から肝小葉にかけて動員され、それに沿うように幹細胞マーカー(CK19, EpCAM)陽性細胞の拡がりが観察された。単球/マクロファージの一部は、MMP-1を発現していた。一方、前述の脾摘症例(40例)のうち、経過観察期間に肝癌を発症して肝切除が施行された7例において、9例中7例で線維化の改善を認めた。動因マクロファージを中心とした、肝修復機構の存在が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ヒトでの解析は順調に進んでいるが、肝発癌に与える影響については、解析準備中である。
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今後の研究の推進方策 |
脾臓細網細胞の筋線維芽細胞への形質転換のメカニズムをさらに詳細に検討していく。また、脾摘と肝発癌の関連について、データ収集を図る。
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次年度使用額が生じた理由 |
脾臓線維化のメカニズムを検討する目的で、ヒト脾臓の免疫組織学的検討を進めたが、年度内に必要な抗体試薬が入手困難であり、次年度に繰り越して研究を行うこととなった。
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