研究課題/領域番号 |
17K10508
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
河野 寛 山梨大学, 大学院総合研究部, 准教授 (40322127)
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研究分担者 |
雨宮 秀武 山梨大学, 大学院総合研究部, 助教 (70377547)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | マクロファージ / 細菌性腹膜 / サイトカイン |
研究実績の概要 |
消化器外科の領域において、治療法や診断技術の進歩が著しい現在の医療においても、消化管穿孔による細菌性腹膜炎は依然として致死率の高い重篤な疾患である(South Med J 2007;100: 594-600)。これまでの報告を要約すると、細菌性腹膜炎によるには大きく分けて二つの病態が関与している。一つは消化管外に漏出した細菌群に対する局所での感染防御機構である。もう一つは、細菌やエンドトキシンにより活性化された免疫担当細胞から産生される過剰なサイトカインやケモカインが感染局所から離れた部位での炎症反応、凝固反応を惹起しすることに伴う遠隔臓器障害であり、重症化すると多臓器不全より致死に至る(Shock1998; 10: 79-89)。その中でも、肺は早期に障害を受ける標的臓器である。腹膜炎の治療として、局所の炎症の制御は手術的なドレナージが最も有効であるが、予後に強く寄与する肺や肝臓などの遠隔臓器の障害を制御する有効な薬物治療方法は未だ確立されていない。申請者らのこれまでの検討結果より、細菌性腹膜炎において肝マクロファージKupffer細胞由来のIL-10が肺障害と致死率に関与する事実を報告した(J Leukoc Biol.2006;79:809-17.; J Surg Res. 2008;150:169-182) 。一方、Neuropeptideである下垂体アデニル酸シクラーゼ活性化ポリペプチド (PACAP) は、エンドトキシン(Etx)血症において、活性化マクロファージによる抗炎症性サイトカインIL-10産生亢進により強力な抗炎症作用を有する事実が報告されている。そこで、本研究では、PACAP が細菌性腹膜炎よる、重篤な病態であるARDS発症と、高い死亡率の改善効果を有するとした仮説を検証と、その臨床応用が目的である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
理由 目的:下垂体アデニル酸シクラーゼ活性化ポリペプチド (PACAP) は、エンドトキシン血症において活性マクロファージ(Mf)由来の炎症性メディエーター生産抑制と、抗炎症性サイトカイン産生亢進で強力な抗炎症作用を有する。PACAPの細菌性腹膜炎における致死率改善効果を検討した。方法:盲腸結紮穿刺(CLP)モデルを作製し、PACAPをCLP作成1時間前、直後、1時間、2時間後に投与し、ARDS発症と致死率を検討。血清IL-10と致死的マーカーHMGB1値を測定した。肺ならびに肝臓で炎症性サイトカインであるTNF-alphaならびにIL-6、また、抗炎症性サイトカインであるIL-10のmRNA発現を検討した。さらに、Mfと好中球(Nu)の肺と肝臓での分布を検討した。PACAP共培養下でのサイトカイン産生を肺胞、肺間質、肝臓Mfと末梢血単球で検討した。結果: PACAPの投与効果はCLP後1時間において最も致死率が改善した。ARDSも著明に改善し、致死的サイトカインである血HMGB1は低下し、IL-10は有意に高値となった。肝臓におけるTNF-alpha、IL-6は低下し、IL-10は肺で増加した。PACAP投与群で肺間質に存在するMf数が増加、Nu数は有意に低下。肝MfのTNF-alphaとHMGB1の産生抑制と肺間質Mfの IL-10産生増加を認めた。考察: PACAPは細菌性腹膜炎発症後の致死率を著明に改善した。その機序のとして、血清IL-10が考えられた。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの検討を更に展開し肝臓、肺におけるCXC ケモカイン MIP 2 および KC、および CC ケモカイン MIP-1 alphaとbata、MCP-1発現について検討する(ケモカイン発現抑制効果の検討)。ACAPの肝臓、肺、腹腔マクロファージの貪食能と炎症性サイトカイン産生に与える影響を、マウス分離肝臓、肺マクロファージにin vitroでPACAP(5ng/ml in media)と共培養し、FITC蛍光ビーズを用いた貪食能と、in vitroでのLPS刺激(50 microgram/1ml in media)によるTNF-alpha、IL-6の産生をELISA法で検討する。また①ならびに②のモデルにおいて、血液をCLP作成24時間後に採取し血液培養と、細菌DANを検討する。、PACAPの投与効果が成熟マクロファージを介した機序であるかを検討する目的で、マクロファージの誘導・分化に関与するサイトカインであるmacrophage colony-stimulating factor (M-CSF)欠損(op/op)マウス(C57BL/J6 back ground)とlittermateを用いてCLPモデル作成直後あるいは1時間後にPACAP38/27を投与し、致死率を検討する。また、2から4の検討項目を測定する。さらにPACAPの細菌性腹膜炎における投与効果の作用機序に関し、中枢神経系における抗炎症作用に関する検討を行いたい。
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