研究課題/領域番号 |
17K10510
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
祝迫 惠子 京都大学, ウイルス・再生医科学研究所, 特定講師 (70625300)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 線維化 / 筋線維芽細胞 / 肝内胆管癌 / 膵癌 |
研究実績の概要 |
肝内胆管癌や膵癌は、いずれも極めて多様な遺伝子変異を有することが報告されており、単一の治療標的を見出すことは困難であると考えられる。一方、ほとんどの症例で、病理組織学的に「腫瘍間質の線維化」という共通した所見が認められる。癌組織に共存する線維化が、癌の進展にどのように影響しているかを明らかにするため、H29年度は、臨床検体(肝内胆管癌と膵癌)の組織学的解析を行った。 手術標本のパラフィン切片を用いて、シリウスレッド染色を行い、癌部、非癌部の線維化をImage J を用いて定量的に評価した。線維化の程度と予後の関連を検討し、肝内胆管癌については、非癌部の線維化が高度であるほど予後は不良であることがわかった。さらに腫瘍間質の構成細胞の詳細を明らかにするために、パラフィン切片を用いてCD4, CD8, FOXP3の免疫染色を行い、T細胞の癌組織内局在や密度を定量化することを試みている。免疫細胞の染色については、チラミドシグナル増幅(TSA)技術を導入することにより、T細胞分画を識別できるようになり、T細胞は癌組織中に偏在することがわかってきた。並行して凍結組織からtotal RNAを抽出し、RT-PCRによって遺伝子発現レベルからも免疫細胞などの浸潤について、定量的な評価を進めている。FOXP3遺伝子の発現量が多いほど予後が不良であることが確認され、肝内胆管癌や膵癌についても癌免疫が癌の進展に大きくかかわっていることが示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H29年度、線維化及びT細胞浸潤についての組織学的解析を行い、予後の関連について、新たな知見がえられた。さらに、腫瘍浸潤リンパ球(Tumor Infiltrating Lymphocyte; TIL)について、フローサイトメーターでの解析を行うための検体も収集することができた。線維化の責任細胞である筋線維芽細胞が肝内胆管癌や膵癌において、癌の進展に重要な役割を果たしていると考えられ、当初の計画に従って、H30年度以降も本研究を進めていく予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
癌組織に共存する線維化は、癌の進展をサポートしていると考えられているが、肝臓や膵臓における線維化の責任細胞である筋線維芽細胞については不明な点が多い。本研究では、線維化を伴う肝内胆管癌と膵癌について、筋線維芽細胞が癌細胞、間質細胞、免疫細胞にどのように作用し、癌の進展をサポートしているのかを解析することにより、新たな治療法を見出すことを目的としている。筋線維芽細胞が特異的に産生する因子が癌細胞の増殖を刺激したり、免疫細胞の反応性を変化させたりする場合、これらが治療薬や治療標的となりうる。臨床検体の解析から、候補を絞り込み、検証実験を行いたいと考えている。
|