研究課題
肝内胆管癌や膵癌は、いずれも極めて多様な遺伝子変異を有することが報告されており、単一の治療標的を見出すことは困難であると考えられる。一方、ほとんどの症例で、病理組織学的に「腫瘍間質の線維化」という共通した所見が認められる。癌組織に共存する線維化は、癌の進展をサポートしていると考えられているが、肝臓や膵臓における線維化の責任細胞である筋線維芽細胞については不明な点が多い。本研究では、線維化を伴う肝内胆管癌と膵癌について、筋線維芽細胞が癌細胞、間質細胞、免疫細胞にどのように作用し、癌の進展をサポートしているのかを解析することにより、新たな治療法を見出すことを目的とし、本研究を行った。肝内胆管癌の約70例の臨床検体について解析を行ったところ、意外なことに癌組織における線維化が高度であるほど予後が良好である傾向が認められた。一方、背景の非癌部については、線維化が高度であるほど予後が不良であった。このことから、肝組織における線維芽細胞、免疫細胞について、各細胞の特異的マーカーを指標に、免疫組織学的染色やRRT-PCRによる遺伝子発現解析によって、癌部の線維化との関連を解析した。線維芽細胞の浸潤と線維化に相関があり、さらに免疫細胞の中で制御性T細胞の浸潤が多いほど予後が不良であることが見いだされた。一般的に癌部のCD8陽性細胞が予後の指標と考えられているが、CD8陽性T細胞よりも制御性T細胞のほうが関連が強い結果であった。また、線維化について、構成成分であるコラーゲンについてにtypeⅠとtypeⅢを偏光顕微鏡を用いて、そのサブタイプの解析を行った。癌部は非癌部と比較してtypeⅢの割合が高かった。非癌部のtypeⅢと癌部への制御性T細胞の浸潤に相関見られたことから,筋線維芽細胞が免疫細胞の応答性に影響を与え、予後に寄与する可能性が示唆された。
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