研究課題/領域番号 |
17K10512
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
井手 健太郎 広島大学, 病院(医), 助教 (50511565)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 抗体関連型拒絶反応 / 脱感作療法 |
研究実績の概要 |
移植前の時点でレシピエント血清中に抗ドナーHLA特異的抗体(DSA)が高度に存在する場合、移植後に抗体関連型拒絶反応を発症し、移植臓器が廃絶する危険性が非常に高いため移植は禁忌とされている。我々はこのような高度に感作した移植希望患者に対して、B細胞分化様式に即した脱感作療法を独自に考案し、DSAの産生を制御し移植を可能とさせた。しかし長期の脱感作期間を要し、中には脱感作困難な症例も存在するためプロトコールの更なる改良が望まれている。本研究では高感作マウスモデルで我々が臨床応用している脱感作療法の改良と新薬の可能性について検証し、今後の実臨床へ応用することを目的とする。 本年度は抗ドナーMHC抗体を有する感作マウスの作製を行った。まずC57/BL6マウス(class I H-2Kb)にBalb/cマウス(class I H-2Kd)の細胞を投与経路・投与細胞数・投与回数を変え免疫した後、C57/BL6マウスの血清を回収し、ドナー抗原を標的としたフローサイトメトリー法で抗ドナー抗体価を経時的に解析した。その結果、Balb/cマウスの脾細胞10×106個を経静脈的に2日連続投与する方法が、最も効果的に抗ドナー抗体が産生されることを明らかにした。次いで抗CD20抗体、プロテアソーム阻害薬を感作マウスに単剤もしくは2剤併用投与し脱感作を試みた。その結果、抗CD20抗体、プロテアソーム阻害薬の単剤投与では抗ドナー抗体価は若干低下するものの完全に消失することは不可能であった。また2剤併用療法ではマウスは全例死亡したため、投与方法のさらなる工夫が必要であると考えている。 今後は脱感作療法中のメモリーT細胞、制御性T細胞および濾胞ヘルパーT細胞の解析も行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
感作マウスの作製過程において、様々な感作レベル(低~高抗体価、Class I優位、Class II優位など)のマウスの作成を目指していたが、その点における解析は十分とは言えず、次年度に再評価を行う必要がある。また抗体産生および脱感作における制御性T細胞 (Treg) および濾胞ヘルパーT細胞 (Tfh) の役割を解析する目的で、感作TCR75トランスジェニックマウス(Balb/cマウスのH-2Kdペプチド特異的に応答するT細胞を有するC57/BL6バックグラウンドのマウス)を使用する予定であったが、感作マウスの作製過程における投与経路・投与細胞数・投与回数の条件設定に想定外の時間を要した。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの実験結果より、抗ドナー抗体を産生するマウスは作製可能となった。今後は脱感作療法中のメモリーT細胞、制御性T細胞および濾胞ヘルパーT細胞の解析、新規脱感作プロトコールの開発ならびに新規薬剤の有効性の検証を行っていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
感作マウス作製過程に遅れが生じ、TCR75トランスジェニックマウスの購入が先延ばしとなったため、次年度使用額が生じた。 使用計画:抗ドナー抗体を有するマウスの作製のためのマウスの購入、免疫細胞解析のためのフローサイトメトリー用の抗体購入、抗CD20抗体およびプロテアソーム阻害薬の購入、血清補体価測定のための試薬の購入。
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